①知っているつもりの女性ホルモン 【私の体と心を知ってもっとキレイになろう】

皆さん、はじめまして。私は保健師・公認心理師の岩崎有子です。

これから、6回にわたり、女性の体と心について解説していきたいと思います。このシリーズで、ご自身の体と心を理解して、「もっと私らしく」なっていただければ幸いです。

第1回のテーマは「知っているつもりの女性ホルモン」です。なんとなく聞いたことはあるけれど、どういった働きをするのかは知らない…という方に、ぜひ読んでいただければと思います。

女性ホルモンとは

数多くあるホルモンのなかでも、女性にとても大きな影響を与えるのが女性ホルモンです。

女性ホルモンとは、卵巣から分泌される2種類のホルモン、卵胞ホルモン(エストロゲン)黄体ホルモン(プロゲステロン)のことです。女性が丸みをおびた体つきになるのも、月経が起こったり、妊娠、出産ができたりするのも、このふたつのホルモンの働きによるものです。

卵胞ホルモン黄体ホルモンは思春期になると分泌が始まります。そして、年齢や月経(生理)の周期で分泌量が変化し、わずかな変化で女性の体をコントロールしていきます。

ホルモンの分泌が乱れると、体、そして心に不調を来たします。女性が健康でいるためには、女性ホルモンの分泌がきちんと保たれていることがとても大切なのです。

女性ホルモンの働き

卵胞ホルモン(エストロゲン)

・排卵前に精子が通りやすくなるように子宮頸管の分泌液を増やす
・妊娠中に乳汁が出るのをおさえる
・丸みをおびた女性らしい体をつくる
・肌のハリや潤いを保つ
・骨の密度を保つ
・コレステロールを調節して動脈硬化を防ぐ
・記憶力の低下を防ぐ
・感情を安定させる

黄体ホルモン(プロゲステロン)

・受精卵が着床しやすいように子宮内膜を整える
・受精卵が内膜に着床した場合、分泌を続けて内膜の状態を保ち、妊娠の継続を助ける
・食欲が増進する
・水分を蓄える
・眠くなる
・乳腺の発達を促す

卵胞ホルモン(エストロゲン)は女性が健康や若々しさをキープしていくために大切なホルモンです。

黄体ホルモンは妊娠を維持するために大切なホルモンです。黄体ホルモンが多く出ている時期は、むくみやすかったり、たくさん食べてしまったり、眠くなったりすることがあります。乳腺の発育も促すので、妊娠のご経験がある方は妊娠期に「眠い」、「胸が大きくなる」と感じたことがあるのではないでしょうか。

ふたつのホルモンが協力して妊娠・出産に備える

ふたつのホルモンが協力して行う大きな働きは、妊娠、出産に備え子宮の環境を整えることです。卵胞ホルモンが子宮内膜を増殖させ、黄体ホルモンが増殖した子宮内膜を受精卵が着床しやすい状態にしていきます。(受精卵が着床するためにベッドを作るみたいなイメージでしょうか)

妊娠が成立しなければ、黄体ホルモンの分泌が減って、必要がなくなった子宮内膜がはがれおち、プロスタグランジンというホルモンが分泌され、子宮を収縮させます。月経痛は、この収縮の刺激が痛みになってあらわれたものです。(子宮が縮むから痛いのです)

ふたつの女性ホルモンがバランスよく分泌されていることで、一定の周期でそうした子宮内膜の変化(増殖する⇔はがれる『月経』)がくり返されます。そして毎月の女性の体のリズムが生まれているのです。

女性の一生のホルモンの変化を知ろう

思春期(おおよそ8歳~18歳)
子宮や卵巣は未熟で、月経も初めは不規則。ホルモン分泌の急増についていけず、頭痛やだるさを感じたり、イライラしたり急に元気になったりと、心も体も不安定です。また、成長の早さにはかなり個人差があり、そのことで悩む場合も。
この時期に注意したいのはダイエットです。女性ホルモンの働きで20代前半までに一生分の骨が作られます。栄養不足になれば十分な骨はできません。月経不順も招きますので、成長に必要な栄養をきちんと取ることが大切です。
成熟期(おおよそ18歳~45歳)前半
妊娠・出産を考えている時期です。この時期は、ホルモンや体の機能的に妊娠、出産に適した時期でもあります。女性の生き方はとても多様化していますから、自分の生活に合わせて計画していきましょう。
成熟期(おおよそ18歳~45歳)後半
体の衰えがはじまり、乳がんなどの病気の心配も出てくるとき。頑張れば乗り切れた成熟期前半とは違います。これまでと同じように無理をしがちですが、健康を過信せずに、休息をとったり、定期的に健康診断を受けることが大切です。女性特有の病気については別の回でお話しましょう。
更年期(おおよそ45歳~55歳)から高齢期(おおよそ55歳~)
閉経をむかえる更年期(おおよそ45歳から55歳)、多くの女性が50歳前後に閉経をむかえます。この時期は思春期とは逆に女性ホルモンが急激に減少し、その変化に体がついていかず多くの不調が起こります。無理せず、変化を理解することが大切です。
55歳ごろからが高齢期。卵巣は完全に役割を終えます。なんとなく寂しい感じがするかも知れませんが、ここからが「第二の人生のスタート」だと筆者は思います。この時期は若々しい思考をすることや、前向きな考え方、日々の生活習慣に気を使い、「体をケアする」ことが大切な時期です。

約28日のサイクルで変化する「女性のからだ」

受精卵の着床に備え増殖した子宮内膜(赤ちゃんのベッド)が、受精卵が来なかったためにはがれ、血液とともに排出されるのが月経(生理)です。月経は、通常ならば約28日の一定のサイクルでやってきます。

排卵や子宮内膜の変化など、毎月の体のリズムを女性の体に起こしているのは、女性ホルモンの卵胞ホルモン(エストロゲン)黄体ホルモン(プロゲステロン)です。

ただし体のリズムはいつも一定とは限りません。また個人によっても違いがあり、そのリズムによって引き起こされる、不調などのあらわれ方も変わってきます。

月経周期は4つに分けられる

くり返される月経の周期はホルモン分泌の変化などによって、卵胞期、排卵期、黄体期、月経期の4つに分けて考えられます。各期間の日数は個人によって異なりますので、あくまでも目安としてください。

卵胞期(らんぽうき)約14日間

下垂体から卵胞刺激ホルモンが分泌され、原始卵胞が成長し成熟してくると、卵胞ホルモンが分泌されて子宮内膜も増殖をはじめます。基礎体温では低温期の時期。卵胞ホルモンの働きによって、心も体も調子がよく、活動的になれる時期といわれます。

排卵期(はいらんき)約3日間

卵胞が十分に成熟し、卵胞ホルモンの分泌もピークに分泌され卵胞から卵子が排出されます。時期は月経(生理)の12日~16日とされます。この時期に精子と受精することで受精卵となり、子宮に着床(ちゃくしょう)することで、妊娠とされます。おりものの量が多くなり、基礎体温は排卵を境に高温期になります。卵子が飛び出すときに、排卵痛を感じる人もいます。

黄体期(おうたいき)約14日間

排卵したあとの卵胞は、黄体ホルモンの働きで黄体に。黄体ホルモン卵胞ホルモンより多く分泌されます。子宮の内膜はフカフカになって、受精卵をむかえる準備が整い、基礎体温は高温期が続きます。この時期は、眠くなる、乳房が張る、腰痛、肌荒れ、気分が不安定になるなど、さまざまな不調があらわれることがあります。

月経期(げっけいき)約3日~7日間

排卵から12から16日後、受精卵がやってこないと、卵巣の黄体は白体と呼ばれるものに変化し、黄体ホルモン卵胞ホルモンも急激に減少します。不要となった子宮内膜ははがれおち(お腹が痛みます)、血液とともに月経として排出されます。基礎体温は下がり、腹痛、頭痛、下痢などが起こるわけです。

女性ホルモンの乱れを知れば、もっとキレイになれる

女性の体のリズムをつくっている女性ホルモンは視床下部、下垂体、卵巣の機能や、性腺刺激ホルモンの働きなどのどこかにトラブルが起これば、分泌が乱れてしまいます。すると、月経不順やPMS(月経前緊張症)など月経に関する不調が起こったり、卵胞ホルモンの働きで保たれていた肌のハリや潤いがなくなったり、将来、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)を起こしやすくなったりします。

また、女性ホルモンの分泌を促そうと視床下部が働くことで、自律神経も影響を受け、頭痛やイライラなどの不調も起こります。更年期には、加齢による女性ホルモン分泌の急激な減少によって、そうしたさまざまな不調が起こりますが、若い人でも女性ホルモンの分泌が悪くなれば、似たような症状が起こります。

ホルモン分泌の乱れを予防するには

それでは、ホルモン分泌の乱れを予防するにはどうすればいいのかをご説明しましょう。

不規則な生活、栄養不足や偏りは、体力や体の回復力を低下させ、体調を崩す原因となります。体調の乱れは、女性ホルモン分泌の乱れを生じます。規則正しい生活を送ることや、バランスの良い食事を摂ることは、美しい生活を送る秘訣となります。

ストレスも、ホルモン分泌に影響を及ぼすと考えられています。よく「自律神経が乱れて~」という話を耳にすると思いますが、これは交感神経ばかりが働くことで、体と心が不安定となるのです。当然、自律神経の乱れは女性ホルモンに大きく影響するので、月経(生理)不順を引き起こすこともあるわけです。ストレスの解消方法は人それぞれですが、このコロナ禍ですから、自宅でできるストレッチや呼吸法、映画鑑賞、音楽鑑賞や読書など、ご自身に合ったスタイルを見つけてください。

ホルモンの乱れは「不規則な生活」「栄養バランスの乱れ」「ストレス」。規則正しい生活を意識して、自分に合うストレス解消法を見つけよう!

まとめ

ここまで女性ホルモンについて解説してきましたが、女性ホルモンは女性の体の中でさまざまな変化をもたらすものだとご理解いただけたでしょうか。

こぼれ話ですが、最近よく聞く「幸せホルモン」とは、「オキシトシン」というホルモンです。お産の後に赤ちゃんに母乳を促進するホルモンですので、授乳期によく分泌されますが、恋人と手をつなぐとか、ご主人と手をつなぐとか、ペットと遊ぶといったことでも分泌されるようです。皆様も「幸せ」を感じてくださいね。コロナ禍でも、ご自身のライフサイクルに合った健康づくりをしていきましょう。

この記事の著者

岩崎有子(いわさき ゆうこ)

看護師・保健師・公認心理師資格を保有。群馬県立福祉大学校保健学科および放送大学教養学部卒業。武蔵野大学大学院修士課程 人間学専攻在学中。旧与野市役所、埼玉県大宮保健所勤務を経て、さいたま市の保健師として18年勤務。現在は看護師添削指導員、地域活動支援センター、就労移行支援事業所、就労継続支援、放課後等デイサービス、NPO活動など様々なフィールドで活動を行う。専門は障害福祉、小児精神保健、障害者の性。