⑦教育・訓練を受ける「わたしの幸せをつくる転職活動」

皆さん、こんにちは。公認心理師/臨床心理士/キャリアコンサルタントの山本智代です。「わたしの幸せをつくる転職活動」をテーマに、効果的な転職活動の進め方について連載しています。

本連載では、キャリア・プランニング・プロセスという方法に則り転職活動を行うことを勧めており、前回はキャリア・プランニング・プロセスのステップ5「仮決定」として、 仮決定の必要性と行動計画についてお伝えしました。

キャリア・プランニング・プロセス

  1. 意思決定の必要性の自覚・・・転職の必要性を判断
  2. 自己の再評価・・・職業経験の振り返り、興味・能力・価値観の見直し
  3. 職業・仕事の特定・・・職業・仕事の絞り込み
  4. 選択肢に関する情報収集・・・絞り込んだ職業・仕事の情報を様々な手法で集める
  5. 仮決定・・・ステップ3で絞り込んだ職業・仕事から1つの選択肢を選ぶ(前回)
  6. 教育・訓練・・・必要があれば、資格取得やスキル向上の教育・訓練を受ける
  7. 転職・異動・・・ステップ5で選択した職業・仕事への応募、応募書類の作成、面接

前回までの記事をご覧になっていない方はぜひこの機会にご一読いただければと思います。

仕事/就職・転職
①【転職のタイミング】今の仕事に疑問を感じたとき、あなたならどうする 「わたしの幸せをつくる転職活動」
仕事/就職・転職
②【自己の再評価】転職を決めたら、まずやること「わたしの幸せをつくる転職活動」
仕事/就職・転職
③職業・仕事を特定する(前編)「わたしの幸せをつくる転職活動」
仕事/就職・転職
④職業・仕事を特定する(後編)「わたしの幸せをつくる転職活動」
仕事/就職・転職
⑤職業情報を集めるコツ「わたしの幸せをつくる転職活動」
仕事/就職・転職
⑥仮決定をする「わたしの幸せをつくる転職活動」

教育・訓練のステップ

今回はステップ6「教育・訓練」についてお伝えします。本ステップでは、ステップ5で仮決定した職業・仕事に対し、スキルや知識を補う必要のある場合、資格取得が必要な場合が主な対象となります。訓練を既に十分積んでいる方、あるいは専門的な知識や技術が不要な職業・仕事を仮決定した場合は、本ステップを飛ばしてよい場合があります。

キャリア・プランニング・プロセス(再掲)

  1. 意思決定の必要性の自覚・・・転職の必要性を判断
  2. 自己の再評価・・・職業経験の振り返り、興味・能力・価値観の見直し
  3. 職業・仕事の特定・・・職業・仕事の絞り込み
  4. 選択肢に関する情報収集・・・絞り込んだ職業・仕事の情報を様々な手法で集める
  5. 仮決定・・・ステップ3で絞り込んだ職業・仕事から1つの選択肢を選ぶ
  6. 教育・訓練・・・必要があれば、資格取得やスキル向上の教育・訓練を受ける
  7. 転職・異動・・・ステップ5で選択した職業・仕事への応募、応募書類の作成、面接

例えば、ステップ4に登場したD子さんの場合、社会福祉士・精神保健福祉士の資格取得が必要と考えられる医療ソーシャルワーカーを中長期プランの職業・仕事として、現在は保留にしました。

Dさん

将来的に医療ソーシャルワーカーとして働きたいけれど、資格が必要だから、子育てが落ち着くまでは保留かな。

Dさんのように、知識獲得が必要な職業・仕事を保留にした場合も、本ステップ6を飛ばしましょう。

教育や訓練を受けるまでのステップ

以下は、教育や訓練を受けるまでに踏むとよいステップです。

教育・訓練の必要性を検討

仮決定した職業・仕事には、どのようなスキルや資格が必要か、あるいは必要でないかを検討します。まずは、ステップ5で仮決定した職業・仕事について、どのようなスキルや資格が必要か、あるいは望ましいかを知りましょう。そして、現在自分に不足しているスキルや資格がある場合は、それらを身に付ける必要性を検討しましょう。

!大切なポイント
What do you do it for? ―何のためにしますか?―

教育・訓練の際に大切なのは、「何のために身に付けるか」という「目的」です。転職や離職のタイミングで、教育訓練を検討される方は少なくありません。

一方、「PCスキルがないから訓練でも受けてみようかな」「前職はうまくいかなかったから、この資格でも取って再就職しようかな」など、「なんとなく」で教育・訓練を受けるか迷っていると相談におみえになる方もいらっしゃいます。

未経験の仕事にキャリアチェンジする際、教育・訓練を受けることは有効な「手段」ですが、「目的」ではありません。「○○の仕事や職業に就くために、□□のスキルや資格を取得する」という、教育・訓練の「目的」を明確にしましょう。
入学試験や教育訓練の面接場面においても、この点は問われる重要ポイントの一つと言ってよいでしょう。

STEP
1

タイミングは今か?―目下の就職に有効か?―

訓練や教育は、それにかける期間や資金・労力、場合によっては協力者も必要です。目下の就職活動において、「現在、教育・訓練を受けることが、自身の就職に有効かどうか」という視点も必要でしょう。

場合によっては、社内でスキルアップのプログラムや資格取得支援を設けている企業もあります。また、教育・訓練を受ける目的がスキル向上や就職に必ずしも必須でないスキルや資格取得の場合は、就職後に働きながら身に付けていくことが可能かもしれません。通信教育や民間の研修プログラム、自治体独自で行っている研修の受講、有志の勉強会など、身に付ける方法や選択肢を検討してみましょう。

ちなみに筆者の場合は、心理職に必要な教育・訓練を受けるにあたり、「フルタイムで働きながら単位取得できること」が必須条件でした。学費の捻出が必要だったからです。また、当時は地方に住んでいたため、単位取得が可能な夜間学校のある都市部への転居と、それに伴い当時働いていた仕事からの転職も必須となりました。夜間学校入学、転居、転職のトリプルチェンジは、どれも結果がみえない中でしたが、それでも今選択しなかったことに後から後悔したくないと、最後は「えいや!」で決断しました。

教育・訓練を受けることは、あなたにとっては、現在なのか、今後の中長期プランとして保留にするか、改めて検討してみましょう。

STEP
2

より適した教育・訓練機関を選定する

教育・訓練を受けることを決定したら、次は情報収集と選定です。仮決定した職業・仕事に必要なスキルや知識が得られるカリキュラムや訓練を受けられる学校、教育・訓練機関などを見つけることです。

ここで改めて、キャリア・プランニング・プロセスのステップ2、3、4、5を振り返ってみましょう。「自分のありたい姿や望み(興味・能力・価値観)に通じており、必要とするスキルや知識が得られる教育・訓練機関」×「現実検討」の検討を繰り返しながら、仮決定までのプロセスを進めていきましょう。そうすることで、あなたにとってより適切な教育・訓練機関の選定に近づくことが期待できるでしょう。

STEP
3


公的な職業訓練について知りたい方は、下記のサイトを参考にするとよいでしょう。

公共職業訓練

■公共職業訓練https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/hellotraining_top.html

また、資金面の助成制度なども調べてみるとよいでしょう。国の教育訓練給付制度や学校独自で設けている学費免除制度などです。教育訓練給付制度では、教育・訓練にかかる費用の一部が助成されるしくみになっています。以下のサイトをご参照ください。


■教育訓練給付制度
厚生労働省 の教育訓練給付制度です。教育訓練給付の対象として厚生労働大臣の指定を受けている講座は、以下のサイトから分野ごとに検索することができます。

・教育訓練給付制度[検索システム]

https://www.kyufu.mhlw.go.jp/kensaku/SCM/SCM101Scr02X/SCM101Scr02XInit.form

コロナ禍における雇用情勢の中で、全国の大学が企業・経済団体・ハローワーク等と連携し、2か月から6か月程度の短期間で就職・転職に繋がるプログラムを受講費無料(テキスト代等除く)で提供するプログラムがあります。一部のプログラムでは、求職者支援制度と連携して、職業訓練受講給付金を受給しながら学習することができます。

就職・転職のための大学リカレント教育推進事業(文部科学省)
https://www.mext.go.jp/a_menu/ikusei/manabinaoshi/mext_01127.html


マナパス:「受講費無料!就職・転職支援応援プログラム」特設ページhttps://manapass.jp/sp/012/covid-19shien/

トランジション(転機)の心理的プロセス

人生の転機(トランジション)への対処法を成人の発達の観点から検討したWilliam Bridgesは、転機の心理的なプロセスを「終わり(何かが終わる)」「ニュートラル・ゾーン」「始まり(何かが始まる)」の3段階として表しました。

例)仕事を辞める   →  モラトリアム(猶予期間)→新たに教育・訓練を受ける

「終わり」とは、例えば仕事を辞めるときや変わるときなどの状況が考えられます。ブリッジズは、「終わり」の体験は重要であるとともに、「終わり」とはある状況が終わるだけではなく、同時に、あるプロセスの「始まり」でもあると述べています。

次の「ニュートラル・ゾーン」とは、空白期や休養期間とも言えます。「ニュートラル・ゾーン」は、日常生活からの「モラトリアム(猶予期間)」であり、ブリッジズは、この期間を経験することで「自分を変えていく」という重要な内的活動に取り組むことができると考えました。


就職活動において、「何もしていない自分に焦る」という言葉を耳にすることがあります。就職に直結した「外的な形として表れる行動(応募や面接)」をしていない自分は何もしてないように感じて焦る、という方は少なくありません。キャリア・プランニング・プロセスのステップ5までを踏んでいくこと、あるいは本ステップで教育・訓練の時間を費やすことは、一見就職に遠いことのようにみえるかもしれません。

しかし、「自分は何を望むか、どうありたいか」を中心軸に、自分の内面と向き合い、自分を知り、現在の自分にとって何が必要かを気付き、自分の方向性を再度見出していく機会をもてること、それに向かって行動していくことは、重要で意味のあるプロセスです。

例えそれが働くことにおける「ブランク」になったとしても、「自分にとって意味を持てている」ということが大切となるでしょう。
「ニュートラル・ゾーン」では、外的な成果は見えづらいかもしれませんが、外的な行動変化に繋がる「内的に意味のある期間」と言えるかもしれません。

最後の「始まり」とは、例えば仕事に就く、新たにスキルを身に付ける、勉強を始める、など、外的にわかりやすい形として始まることもあるとしています。自分の望みに対する不足を認識でき、それを補うための意思決定をして、教育・訓練で身に付けた経験は、あなた自身の強みになります。面接でも前向きにPRできる要素となるでしょう。

人生はトランジション(転機)の連続―心理的に変わること―

ブリッジズは「人生はトランジション(転機)の連続である」と考えます。そして、「変化とは状況が変わることであり、一方、トランジション (転機) とは心理的に変わることである」と述べています。変化とトランジション(転機)を区別し、トランジションとは人生の変化に対処するために必要な内的な再方向づけや自分自身を再定義することであるとしています(Bridges,2004)。

このブリッジズの説明からも、転職の機会に伴い教育・訓練の機会をもつことは、「心理的に変わる機会」とも言えるでしょう。そして心理的に変わる経験は、不確実な時代を生きるうえで、今後起こり得るトランジション(転機)に対して、一つの「心理的に対処する力」を得たとも捉えることができるのではないでしょうか。

まとめ

ブリッジズの「終わり」から「始まり」に進むというプロセスは「人が変化し成長する過程を表している」とも言われています(岡田,2013)。

「終わり(何かが終わる)」は、「ニュートラル・ゾーン」を経て、「始まり(何かが始まる)」になる-「〇〇のために□□を身に付ける」という目的をもって新たに始める教育・訓練は、あなたが心理的に変化し、成長していくプロセスと言えるでしょう。

「始まり(何かが始まる)」に繋がる「ニュートラル・ゾーン」をぜひ恐れることなく体験し、自身の変化・成長を楽しんでいきたいものです。

著者プロフィール

山本 智代(やまもと ちよ)

公認心理師・臨床心理士・キャリアコンサルタント
ココロト オンラインカウンセラー

教育系大学を卒業後、人材総合コンサルタント企業での人材育成・派遣事業、教育関連企業での進路セミナーの企画営業に携わった後、官公庁、ハローワークの採用・キャリア支援の勤務を経て心理系大学院へ進学。卒業後は、心理とキャリアに関する専門家として、行政機関での乳児・幼児・児童の発達・教育相談、ハローワークでのキャリア・心理カウンセリング、スクールカウンセラー等に従事。さらに、女性のキャリア、仕事と子育ての両立などをテーマにしたキャリアカウンセリングやセミナーに携わっている。