ゲーム依存とは?【依存とこころの関係②】

こんにちは。公認心理師の北村ともきです。

新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、多くの生活の変化が起こっています。外出の自粛に伴い、ゲームをする人が増えたり、もともとゲームをしていた人のプレイ時間が増えたりしていると言われています。本稿はそのようなテレビゲームやオンラインゲーム、スマホゲーム等、ゲームに関する依存について解説します。

ゲーム依存について

ソーシャルメディアの進展やスマートフォンの急速な普及に伴って、インターネットは日常の生活の中で欠かせないものとなりました。そんな中で現在流行しているのが、“SNS”と“スマホゲーム”です。共に年齢に関係なく、様々な世代の方々が使用しているのを目にします。スマホゲームは無料で始められるものも多いことから手軽に始めることができるようになっていますが、ゲームが持つ特性によって、やめることが難しくなる場合もあります。いわゆる“ゲーム依存”です。

ゲーム依存は“ゲームをするという行為に依存してしまい、ゲームから離れられなくなってしまう症状”のことです。

今後発効される予定である世界保健機構(WHO)による国際疾病分類第11版(ICD-11)では「ゲーム障害」として、以下の3つの基準が示されています。

ゲーム障害の3つの基準 (ICD-11)

1. ゲームの制御困難
2. ゲームに関する優先度がほかの興味や日常生活よりも高い
3. 否定的な結果にも関わらず、ゲームを継続、またはエスカレートする

また米国精神医学会が出版している精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)では、「インターネットゲーム障害」として記載があり、こちらは、オンラインではないゲームに関しては含まれないとしています。

オンラインゲームについて

オンラインゲームはインターネットを利用するゲームのことです。オンラインゲームとオンラインではないゲーム、どちらも依存する可能性はあります。ただ、オンラインゲームにはオンライン特有の依存しやすい特徴があります。

オンラインゲームが流行する以前は、一つのソフト(カセット)をエンディングまで楽しめば、そこでそのゲームの終わりを迎えるものがほとんどでした。しかし、オンラインゲームは、対戦相手がいる限り終わりはないものが多く、何十時間も続けることができてしまいます。

オンラインゲームの多くは対戦のジャンルのものや得点を競い合うようなものです。このようなゲームの場合、勝つことがあれば、負けることもあり、ランキングで上位に行くこともあればそうでないこともあります。ここにも依存とこころの関係があります。

実は嬉しい体験や楽しい体験が連続するよりも、その体験の間隔が開いたり、嫌な体験がランダムに起きたり起きなかったりする方が人間の行動は持続しやすいとされています(部分強化効果やハンフリーズ効果といわれます)。そのことからも、オンラインゲームでは様々な相手との対戦になり、勝ったり負けたりを繰り返すため、依存しやすいといえます。

また、スマホゲームによく見られる“ガチャ”のシステム、これも良いアイテムやキャラクターが出続けることはなく、出たり出なかったりを繰り返すため、ゲームを続けやすいことが考えられます。パチンコ等のギャンブルも同様の理由から依存に繋がることがあります。

そのため、オンラインではないゲームと比べると、オンラインゲームの方が依存しやすい部分があり、ゲーム依存といった場合にインターネットを利用したゲームを主に指していることがあります。もちろん、オンラインでなくても依存することはありますが、オンラインには依存しやすい部分があり、注意が必要です。

どこからが依存?

依存症は「特定の物質や行為・過程に対して、やめたくても、やめられないほどほどにできない状態」とされています。

依存症の診断には使用頻度や当人の状態を診ますが、特に大切なのは本人や家族が苦痛を感じていないか、生活に困りごとが生じてないか、という点です。

休みの日に一日中ゲームをするからといって依存しているということではありません。出勤時間になってもゲームを中断することができなかったり、睡眠時間や食事の時間を取れなくなったりする等、自分でゲームの時間をコントロールできなくなっている場合は一度依存を疑うべきですが、ゲームが好きで、自分の自由な時間をゲームにあてるということであれば何も問題はありません。趣味としてこれからも大事にしていかれると良いと思います。

ちなみに、依存症は「物質への依存」と「プロセスへの依存」があります。物質への依存はアルコールや薬物等、依存性のある物質を摂取することに依存することです。プロセスへの依存は買い物やギャンブル等、特定の行為に依存することを指します。つまり、ゲーム依存はこの「プロセスへの依存」にあたります。

どのような依存であっても依存症には治療法があります。しかし、自分ひとりで治していくことが難しいというのが依存症の厳しい面でもあります。多くの場合、専門家や相談機関、同じ症状を抱える人等と共に治療していくことになります。もしも何かに依存していることで、生活の中で困り事が起きている場合には専門的な機関やカウンセリング、周囲の人々等、誰かに相談したり、助けを求めたりするようにしましょう。

ゲーム依存にならないためには

先ほどの話にもありましたが、自分の好きな時間をゲームに使うというのであればあまり生活上の問題にはならないと思います。問題となるのは、「他のことをする時間を削る」「ゲームから次の活動に切り替えられない」ということが起きたときだと思います。

ゲームに熱中していると思った以上に時間が過ぎてしまうもので、時計を見ていないこともあると思います。そういったことがある方はタイマーをセットすることでそこで終わりやすくなるかもしれません。またゲームをする部屋と勉強する部屋を分けたり、使わないときにはゲームを自分の目に見えないところに隠したりしておくと、ゲーム以外の他のことをするときに集中しやすくなります。つまり、ゲーム依存にならないためには、ゲームとの距離を自分でコントロールすることも大切です。

ゲームの良いところ

大人であっても、子どもであっても、ゲームが好きで、ゲームが趣味であるという方はたくさんおられると思います。それこそ、ゲームの良い部分の一つです。日常の中で自分が楽しめることがあるというのは良いことだと思います。

またゲームといっても、運動や筋トレのできるものや自分がドラマの主人公になれるもの、勉強できるもの、絵を描くもの等、そのジャンルは幅広く、様々な人にとって楽しめるものだと思います。最近ゲームをしていないという方であれば、ゲームであらゆることができるようになっていることに驚くこともあるかもしれません。昨今の状況であれば、外出できないときに自宅で楽しめることがあるというだけで、気分が少し良くなることもあるでしょう。家の中の趣味の一つとして、ゲームをすることは良いことではないでしょうか。

まとめ

近年、ゲーム依存やゲーム障害はその危険性がSNSやメディアで取り上げられることが多くなってきました。しかし、依存性をよく理解した上で楽しむことができれば、多くの人にとって楽しむことができるものです。自分はしないけど、動画サイト等でゲーム実況を見て楽しむという方もいるかもしれません。自分に合ったゲームの楽しみ方を見つけて、ほどほどに楽しんでみてはいかがでしょうか。

著者プロフィール

北村ともき

公認心理師。心理系大学院卒業後から現在まで、精神科・心療内科にて心理検査やカウンセリングを担当。大人の発達障害や対人不安、依存症、HSP等、人によって様々な症状や特性、生きづらさについて関心を持ち、日々研鑽に励んでいる。

まだまだ学ぶことも多いですが、コラム・カウンセリング共に、精いっぱい取り組みます。よろしくお願いいたします。