ひとりHのお作法 ~気持ちよさも体のケアも大切に~【女性のための保健体育】

皆さん、こんにちは。公認心理師で、保健師の岩崎有子です。

誰にも聞けない。しかし知っておいて欲しい。そんな性の知識について、看護師で公認心理師である私が、徹底解説していきます。私は国立保健医療科学院思春期保健コースを修了し、業界でいわゆる「性の伝道師」と言われています。

少しでも身近な話題をお届けしますので、宜しくお願いします。第2時限目は「気持ちよさも体のケアも大切に」ズバリ「ひとりHのお作法」について解説です。

ひとりHのお作法を身につけよう

セックスに比べて、恥じらいなどから正しい知識を得る機会が少なかった「ひとりH」。

筆者は、オナニーという言葉でなく、あえて「ひとりH」という言葉を使いました。オナニーという言葉は、ネガティブな印象があります。自ら慰めるためだけの行為として捉えられがちです。ですから、筆者は「自慰」という言葉も好きではありません。

しかし、いいセックスを実現するためには、女性にとっては「ひとりH」が不可欠であるということをご存じでしょうか。常に性器を対象に行われるとは限りませんが、自分の体の一部である性器に触れたことも見たこともない状態でセックスするなんて、もったいないと思うのです。体の隅々まで触れて、気持ちいいところを自ら探り当てることができなければ、彼との行為がうまく運ぶはずがありません。明るく「ひとりH」と呼ぶのはそのためです。

まずは、ご自身の感じやすいポイントを見つけることから始めましょう。例えば、お風呂に入ったときやひとり寝の機会を逃さず、快感ポイント探しを楽しんでみてください。快感ポイントを見つけたら記憶しておく。そして、パートナーとのチャンスが訪れたときに、彼に教えてあげてください。「そこじゃなくて、こっち…」と。このような会話によってお互いが、気持ちいいセックスが得られるものだと思います。「ひとりH」というのは、彼とのセックスとの準備みたいなものだと考えてます。

さて、前置きはこれくらいにして、気持ちよさも体のケアも大切にする「ひとりH」のためのお作法を見ていきましょう。

【お作法1】性感帯を決めつけない。

いわゆる性感帯と呼ばれるのは、クリトリスやGスポットなどの性器や乳首です。しかし、性感帯は無限です。例えば、くすぐったいと感じる部分は皮膚が薄く神経が張り巡らされているので、いろんな刺激を与えてみると性感帯に変わる可能性があります。オーガズム(快感)は学習です。ある箇所を刺激してみて気持ちいいことがわかると、感じる回路が生まれます。自分自身のポイントを知っておくといいと思います。

尿道口の上にある突起部分が“クリトリス”で、男性のペニスにあたり、性的に興奮したり刺激が加わると包皮が剥けて勃起する。膣口から3から4cmのお腹側にあるのが“Gスポット”です。“ポルチオ”は子宮口を指します。

【お作法2】クリトリスの触り方は無限大。

クリトリスは快感のためだけの部位。通常に包皮に覆われているので、剥く時は優しくタッチしてください。男性の亀頭と一緒で弱い刺激でも十分です。撫で上げる、押す、振動させるなどいろいろな触り方を試してみてください。またGスポットを刺激すると、膣内からもクリトリスを刺激でき、快感の可能性が広がります。

【お作法3】毎秒5cmのタッチが気持ちいい。

自分なりの性感帯を開発したいなら、気持ちいい触り方をマスターしてみましょう。1秒に5cm移動するスピードで体を触ってみるのもいいでしょう。柔らかいベルベットをなでるようなイメージです。まずは感じやすい太ももの内側から試してみましょう。頭でわかった気にならず、とにかく実際にやってみることが大事です。

【お作法4】ローションはいつも味方です。

ローションは濡れにくい人の救世主です。滑りがよくなるので未体験の気持ちよさを味わえます。ひとりHでその感覚が得られれば、彼とのセックスでも快感が欲しいと興奮して、濡れるスイッチが入ると思います。ただ、使用しているローションは膣に入れてよいものなのか、外陰部のみなのか、成分をしっかりチェックしてから使いましょう

【お作法5】強すぎる刺激には注意をしましょう。

一気にイキたいからと、おもちゃなどで強い刺激を与えるのは注意です。強い刺激に慣れすぎるとペニスの刺激でイケなくなります。「彼とのセックスよりも、おもちゃの方が気持ちいい」というご相談は度々受けることがあります。ネット上には、いろいろなおもちゃがあり、バイブにしても、ローターにしてもディルドも、「強い刺激で、潮吹き」みたいな広告を目にしますが、危険ですね。「ひとりH」はいいですが、彼とのHの方も大切にしたいものです。

【お作法6】おもちゃは信頼できるものを選びましょう。

「ひとりH」におもちゃを使う人は多いです。ただ、性能はさまざまですので吟味は必要です。第一条件としては、洗えるものがよいと思います。安さよりも安全性を重視して信頼できるメーカーのものを選びましょう。また、おもちゃとして食べもの、特にお菓子(スーッとするタブレット)や、メンソール系の軟膏を使うのは絶対やめてください。本当に、「ひとりH」がエスカレートしてきて、さらに快感を求め、おもちゃでは快感が得られず、自己コントロールができなくなることもあります。また、膣を傷つける可能性もあり、雑菌を繁殖させてしまうこともあります。

【お作法7】快感への近道は下半身トレーニング。

オーガズム(快感)は骨盤まわりの筋肉が収縮して起きます。膣のトレーニングで骨盤底筋を鍛えるのも大切ですが、入り口を締めるだけではもったいないです。下半身全体の筋肉を鍛えれば感度が格段にアップして、イキやすくなります。

【お作法8】毎日したってOK。

セックスの頻度と同じで、「ひとりH」の理想の回数も人それぞれです。毎日したい気持ちを我慢する方が不健康です。前回の記事の中で、ホルモンバランスの変化で性欲も変わることは、お伝えしました。興奮しやすい時は積極的に時間をかけて、新しい性感帯の開発をするのもいいかもしれません。性器の状態やおりものの臭い、量も日々変わります。「ひとりH」をご自身の健康チェックに役立てていただけば幸いです。

まとめ

今回は、保健体育の2時間目、皆様タイトルにびっくりなさったのではないでしょうか。「ひとりH」は彼との関係を大切にすることであり、また自分自身の体の状態を把握するためにもネガティブなことではないということを知っていただければ幸いです。

私は、思春期のご相談を受けていて、今回の記事にも書いたのですが、「彼とのセックスよりも、おもちゃの方がいい」「彼とのセックスの中で、感じていないのに演技をして、感じている振りをしなければならない」など様々な相談を受けます。確かにおもちゃは、刺激的で気持ちいい感触が得られるのも事実。しかし、おもちゃに依存しすぎると危険かと、最近のご相談の中で感じ始めています。本稿が皆さまの参考になれば幸いです。

この記事の著者

岩崎有子(いわさき ゆうこ)

看護師・保健師・公認心理師
ココロト オンラインカウンセラー
ココロト メールカウンセラー

群馬県立福祉大学校保健学科および放送大学教養学部卒業。武蔵野大学大学院修士課程 人間学専攻在学中。旧与野市役所、埼玉県大宮保健所勤務を経て、さいたま市の保健師として18年勤務。現在は看護師添削指導員、地域活動支援センター、就労移行支援事業所、就労継続支援、放課後等デイサービス、NPO活動など様々なフィールドで活動を行う。専門は障害福祉、小児精神保健、障害者の性。