うつ病とは何か【分かりやすく解説】

皆さん、こんにちは。臨床心理士/公認心理師の岩崎ひろみです。本稿では、精神疾患の一つであるうつ病を取り上げていきたいと思います。

先日、プロテニスプレーヤーの大坂なおみ選手が3年ほど前からうつ症状に苦しんでいることを公表しました。また、中日ドラゴンズの2軍投手コーチだった門倉健さんが失踪し、帰宅後にうつ病と診断されたという報道もありましたね。

近年では、うつ病は知らない人がいないほど広く知られるようになり、うつ病に対する理解は深まりつつあります。それでも自身がうつ病になったときにどうしたらいいのか、家族など身近な人がうつ病を患ったときにどう対処したらいいのかに悩むことは多いのではないでしょうか。

そこで今回は、うつ病とはどんな病気なのか、そして、どのようにつきあっていけばよいか見ていきたいと思います。

うつ病とは

うつ病は脳のエネルギーが欠乏した状態になり、抑うつ気分、思考力や判断力の低下、疲労感、不眠、食欲不振などの状態が続き、日常生活に大きな支障をきたしてしまう病気です。

うつの症状には、下記のようなものがあります。

うつ病の症状
・憂うつな気分や気持ちの落ち込みが続く
・好きだったことへの興味や楽しみがなくなる
・気持ちが焦ってイライラする、ソワソワ落ち着かない
・何でも自分の責任だと感じてしまう
・将来への希望がなくなり、悲観的に考えるようになる
・集中力がなくなり、能率が低下する
・思考力が低下し、物事の判断が遅くなり、決断できなくなる
・人づきあいが億劫になる
・眠れない、あるいは寝すぎる
・食欲が低下し、体重が落ちる
・性的関心や性欲が極端に落ちる
・身体がだるい、疲れやすい、疲れがとれない、億劫さが強い
・胃もたれ、吐き気、下痢、便秘などの胃腸症状や微熱症状
・頭痛、肩の痛み、腹痛などの身体の痛み

このような症状がみられる場合は、まず精神科や心療内科で専門医に診てもらいましょう。

うつ病は、子どもから高齢者まで世代を問わずに発症する病気ですが、中高年に多く発症するという特徴があります。また、女性と男性を比べた場合、女性の方がうつ病になりやすいといわれています。これは出産、妊娠、更年期に伴うホルモンバランスの乱れなどによって心身のバランスを崩しやすい傾向があるためと考えられています。

うつ病の症状の現れ方の特徴として、朝方に状態がひどく、夕方に症状が落ち着くという、日内変動があります。朝は起きられない、気分の落ち込み、身体が重いなどの症状が強く、夕方から気持ち、身体、行動面で改善されていきます。夕方の姿だけをみればさぼっているように見えるかもしれませんが、うつ病という病気によるものです。

特徴的な病型による分類

うつ病はメランコリア、非定型、季節型、周産期発症などの特徴によって分類されることもあります。

メランコリア」は典型的なうつ病といわれることが多いもので、特徴としては良いことがあっても一切気分が晴れない、明らかな食欲不振や体重減少、気分の落ち込みが決まって朝に悪化する、早朝覚醒(早朝に目覚める)、過度な罪悪感などがあります。

それに対し、「非定型」の特徴としては、よいことに反応して気分が明るくなる、食欲は過食傾向で体重増加、過眠、ひどい倦怠感、人間関係に過敏で傷つきやすいなどがあります。また、非定型は若者に多く、現実社会の各種の秩序や規範に対応できない若者がかかるという見方もあります。病気の背景に回避的・自己愛的なパーソナリティや社会性の未熟さが考えられ、社会性を身につけることが治療につながるとも言われています。

季節型」は特定の季節にうつ病を発症し、季節の移り変わりとともに回復がみられるものです。どの季節でも起こりますが、冬季うつ病が有名で、日照時間との関係があるといわれています。

周産期発症」とは、妊娠中、または出産後4週間以内に気分症状が始まっている場合をいいます。一般的には、出産後に発症する産後うつが有名です。ホルモンの変化、分娩の疲労、子育てに対する不安、授乳などによる睡眠不足などが重なることが影響していると考えられています。

原因

うつ病はなぜ起こるのか?はっきりした原因はよくわかっていませんが、脳内のモノアミンが少なくなることが発症の一因と考えられています。

モノアミンとはセロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンなど気分に影響を与える神経伝達物質の総称で、これらが少なくなり、情報がうまく伝わらなくなるために、様々な症状が現れると考えられています。

また、うつ病はある特定の遺伝子があれば必ず発症するというようなものではなく、複数の遺伝子が関与して「うつ病に対する脆弱性(かかりやすさ)」が遺伝すると考えられています。また、脆弱性があっても100%うつ病になるというわけではなく、生育環境やストレス、性格といった様々な要因が関係しているといわれています。

治療法と対策

うつ病の治療には、「休養」、「薬物療法」「精神療法・カウンセリング」という大きな3つの柱があります。

①休養

うつ病では脳のエネルギーが欠乏している状態になっているため、使いすぎてしまった脳をしっかりと休ませることが大切です。主治医と相談し、うつ病の状態に応じて、仕事を軽減する、残業をしない、仕事を休んで療養するなど、しっかりと脳を休ませることが大切です。

②薬物療法

治療には「休養」が何よりも不可欠ですが、苦痛な症状により休養が十分にとれないことがあります。また、原因のところで述べたように、脳内のモノアミンの減少により情報伝達がうまくいかなくなっている状態ですので、脳の機能的不調を改善し、症状を軽減するために薬物療法がおこなわれます。

うつ病には「抗うつ薬」という種類の薬が有効であると考えられています。ただ、抗うつ薬は即効性のある薬ではないため、効果が現れるまでに少し時間がかかります。すぐに効果が現れないからと薬を中断せず、主治医の指示に沿って一定期間継続することが大切です。

③精神療法・カウンセリング

うつ病を引き起こす原因は一つではないので、休養と薬物療法だけではなく、精神療法・カウンセリングも治療には欠かせないものです。うつ病は繰り返しやすい病気で、特に再発の回数が増えるほど、その後再発するリスクが高まるといわれています。よって、精神療法・カウンセリングでは、病気を招きやすい構造に働きかけ、再発予防に取り組んでいきます。

まとめ

うつ病は治療を始めればすぐに良くなるものではありません。治療の過程で良くなったり、悪くなったりしながら、少しずつ階段を昇るように症状が改善されていくものです。一時の状態に一喜一憂するのではく、長い目で見て、1週間のうちで起きている時間が増えてきた、朝のつらさが少なくなってきたと考えていくことが大切です。

また、少し状態が良くなったからといって、いつも通りに動き出すと症状が悪化することがあります。様子を見ながら、少しずつ生活や職場への復帰を考えていくことが非常に重要です。また、自己判断で薬をやめてしまうと、再発してしまうこともありますので、主治医と相談しながら少しずつ減らしていくことが大切です。

そして、身近な人がうつ病になったときは、本人を励ましたり、気負いすぎず、病気になった本人を受け入れ、気長に見守っていくことが大切です。

この記事の著者

岩崎ひろみ

臨床心理士/公認心理師。カウンセリングルームでの心理カウンセリング、電話相談、福祉施設での面談業務などを経験してきました。臨床では主に成人の方を対象としてきましたが、現在0歳児の育児に奮闘しながら、子どもの発達などについても学んでいます。