乳がん・子宮筋腫・性感染症 -女性特有の病気を知ろう-

私の体と心を知ってもっと、キレイになろう

みなさん、こんにちは。保健師・公認心理師の岩崎有子です。6回のシリーズで、連載中のコラム「私の体と心を知ってもっと、キレイになろう」です。ご自身の体と心を理解して、「もっと私らしく」になっていただければ幸いです。最終回となる第6回は、女性特有の病気について説明したいと思います。早期発見して早期治療を受けていただき、元気よく過ごしていきましょうね。

乳がん

乳がんは乳房にできる悪性の腫瘍です。30~40代の女性に多く発症するがんで、若い女性のあいだでも急増しています。女性が最も多くかかるがんで、年間で約4万人もの女性が発症しています。

乳房に凸凹したような感じのしこりが現れ、しこりが大きくなってくると、乳房の皮膚が引きつれたようになったり、えくぼのように引っ込んだりすることもあり、乳房の形が左右で変わっていることに気づきます。また、乳頭から血の混じった分泌物が出ることもあります。気になる症状があったら、乳腺外科のある病院を受診しましょう。

乳がんは、卵胞ホルモン(エストロゲン)が、乳がんの発生に関係していると考えられていて、下記の方は注意が必要です。

乳がんのハイリスク要因
・初経が早く閉経が遅い(月経年月が長い)
・30歳以上で未婚、授乳経験がない
・40歳以上で肥満である
・母親など近親者に乳がん経験者がいる

毎月1回のセルフチェック

月に定期的に、自分自身の胸を触ってみることが大切です。まずは、乳房のしこりがないかどうか。乳首から分泌物がないか。鏡に映して、上に手を挙げて見て、左右の胸の変形がないかを見ていきましょう。

乳がんは自分で見つけることのできるがんです。ふだんからセルフチェックする習慣をつけましょう。

定期的に乳がん検診を受けることもとても大切です。1年に1回マンモグラフィーを実施している自治体もあります。乳がん検診受け、定期的に異常がないか調べておきましょう。乳がん検診では、視診、触診に加え、マンモグラフィーという乳房専用のレントゲン撮影機と超音波を使っての検査などが一般的です。さらに、乳がんの疑いがある場合は、超音波検査や細胞診、組織診(バイオプシー)、MRI検査、CT検査など、さまざまな検査が行われます。

治療としては、手術によってがんをとり除く方法が基本で、あわせてホルモン療法や化学療法、放射線治療などが行われます。手術には、乳房全体とその奥の大胸筋やわきの下のリンパ節などを切除することがありますが、個人差もありますので、まずは、早期発見にこころがけましょう。

子宮筋腫

子宮筋腫は、子宮の筋肉の一部にできる良性の腫瘍です。成人女性の4~5人にひとりは子宮筋腫があるといわれていますが、自覚症状がないケースも多いので、筋腫があることに気づいていない人も少なくありません。

なぜ筋腫ができるかは、はっきりわかっていませんが、卵胞ホルモン(エストロゲン)の影響で大きくなり、閉経すると自然に小さくなる傾向があります。良性の腫瘍なので、それが悪性のものに変化したり、ほかの場所に転移したりすることはありません。

筋腫ができる場所や筋腫の大きさなどによって違いますが、月経血の量が多くなるのが一般的な症状です。月経期間が長くなり、あまりの出血量の多さから貧血を起こすこともあります。大きくなった筋腫が膀胱や腸を圧迫することで頻尿や便秘になる、寝込んでしまうほどの月経痛に悩まされる腰痛になるなど、症状のあらわれ方はさまざまです。

ただし筋腫のできる場所によってはあまり自覚症状がないこともあり、筋腫がかなり大きくなっていても、「なんだか下腹が太ったみたい」と感じるだけの人もいるようです。ぽっこりとふくらんだしこりに触れて、筋腫に気づくケースも少なくありません。

治療は、そのときどきの、症状によって異なりますので、月経血が大きいと感じて、貧血が進むようであれば、早期に婦人科に受診をしましょう。

子宮頸がん

HPV(ヒトパピローマウイルス)の感染が原因によって起こるがんです。

子宮がんは「子宮頸がん」と「子宮体がん」があり、子宮頸がんは、子宮の入口付近にできるがんで、子宮の内部の子宮内膜にできるのが子宮体がんです。子宮頸がんを発症する大きな原因のひとつは、セックスによって感染するヒトパピローマウイルス(HPV)の感染症によって起こるがんです。

ただし、HPVに感染したら必ず頸がんになるというわけではなく、9割近くの人は免疫力によってウイルスを排除し、がんの発症には至りません。

子宮頸がんのハイリスク要因
・若いときからセックスの経験がある
・セックスの相手が多数いる
・妊娠や出産の回数が多い
・喫煙の習慣がある

これらの条件にあてはまらなくても、セックスの経験があれば、その誰もが頸がんになる可能性はあります。

子宮頸がんは初期の段階ではほとんど自覚症状はありませんが、セックスのあとで出血がみられることがあります。なんとなく、おりものに血が混じっている、月経ではないのに出血しているなど、症状の出方はさまざまです。このような変化がみられたら、早めに婦人科を受診して検査を受けるようにしましょう。自分で行う検査は細胞をきちんと採取できないことがあり、がんを見逃してしまうことがありますので、注意が必要です。

治療は、手術療法、放射線療法、化学療法などの治療法を選択することになります。どの治療法を選ぶかは、病気の状態にもよりますが、これから妊娠、出産を望むのかによっても大きく違ってきます。納得のいくまで医師と相談して、治療方針を決めていくようにしましょう。

子宮頸がんは早期に発見して治療をすれば、ほぼ100%治せるがんです。子宮を残す手術方式もありますので、その後の妊娠、出産が可能になります。

子宮頸がんは、検診を受けることで早期に発見するケースがとても増えています。各自治体で、無料もしくは低料金で検診が受けられるようになっているので、積極的に利用して検診を受けるようにしましょう。年に1度は検診を受けておくことをおすすめします。

子宮体がん

子宮体がんは子宮の内膜にできるがんで、子宮内膜がんとも呼ばれています。原因ははっきりわかっていませんが、卵胞ホルモン(エストロゲン)が分泌され続けることが関係していると考えられています。通常、子宮内膜は月経サイクルにともなって増殖、はく離をくり返しますが、排卵障害や閉経後に子宮内膜がはがれおちないでとどまるとがんの発症につながると考えられています。

主に発症するのは、45歳以上で閉経をむかえた女性や、50~60代の更年期以降の女性ですが、30代で発症することもあります。もともと体がんは欧米人に多くみられ日本人には少なかったのですが、食生活の欧米化がすすむにつれてしだいに増えてきています。また、少子化で出産回数が減ったことも、体がんのリスクを高めています。

子宮体がんのハイリスク要因
・閉経前後である
・妊娠、出産経験が少ない
・無排卵の期間が長かったり、月経不順がみられる
・乳がんにかかったことがある
・肥満、糖尿病、高血圧などがある

子宮体がんの初期症状は不正出血です(ただし必ず不正出血がみられるわけではなく、無症状の場合もあります)。しかし、子宮体がんにかかりやすい閉経前後は、月経の周期が乱れたり、月経量が多かったり少なかったりと月経が不規則になりがちで、不正出血があっても月経との区別は難しいため放置しがちです。不正出血はたいていの場合は、なんらかの病気のサインであることが多いので、自己判断しないで、まずは婦人科を受診して検査するようにしましょう。がんがかなり進行していくと、悪臭のあるおりものがみられるようになります。

治療法は子宮頸がんと同じく手術療法、放射線療法、化学療法などがあげられますが、ほかにホルモン療法として黄体ホルモンを服用する治療法もあります。ただし子宮体がんは卵巣などに転移しやすいため、子宮と卵巣、卵管を切除するのが一般的な治療法で、ごく早期の場合や、将来妊娠、出産を望む場合などは子宮や卵巣を残す治療方法が検討されます。いずれにしても、早期の発見のため、40歳を過ぎたら積極的に検診を受けましょう。

卵巣がん

卵巣にできる悪性の腫瘍で、自覚症状がほとんどないのが特徴です。卵巣がんは発見しにくく転移しやすい悪性腫瘍であるため、「サイレントキャンサー」とも呼ばれています。進行した状態で病気に気づくことが多い分、治療も難しく、死亡率も高くなります。親指大の卵巣が握りこぶしほどに大きくなり、下腹部がぼっこり出ていることに気づく人もいますが、太ったと勘違いし、病気の発見につながらないこともあります。

卵巣がんのハイリスク要因
・母親や姉妹に卵巣がんや乳がんにかかった人がいる
・妊娠、出産経験がない
・高脂肪や高たんぱくなど、欧米型食生活をしている
・閉経が遅い

原因は、はっきりしていませんが、排卵を抑制する働きのあるピルを服用していると卵巣がんのリスクが減ることから、回数が多いほど卵巣がんにかかりやすいことがわかっています。治療法としては、手術と抗がん剤を、組み合わせて治療していきます。

性感染症

性感染症とは、セックスによって感染する病気のことで、「性器クラミジア感染症」、「淋菌感染症」、「性器ヘルペス」、「尖圭コンジローマ」、「膣トリコモナス症」、「梅毒」、「エイズ」などがあります。

女性にいちばん多い性感染症は性器クラミジア感染症です。自覚症状があまりなく、初期症状があるとすれば、おりものに多少の変化がみられる程度です。ただしこれを放置しておくと子宮頸管炎から、卵管、卵巣にまで炎症が広がり、不妊症という後遺症を残すこともあります。

性経験の若年化がすすんでいるため、10代でも性感染症になる人が増えています。性感染症にははっきりとした自覚症状がないものが多く、感染に気づかずにほかの人にうつしてしまうことが感染拡大の原因といえます。

血液をともなうセックスはウイルス感染を起こしやすいので、月経中のセックスは危険です。不特定多数とのセックスも、それだけ性感染症のリスクを高めます。エイズを発症させるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)の感染者も年々増加しているので、性感染症の予防はしっかりと行うようにしましょう。

性感染症予防には、コンドームの使用がかかせません。コンドームは避妊具と思われがちですが、性感染症予防にも重要な役割をはたしています。ただしコンドームはパートナーの協力が得られないと使用できないものです。パートナーと二人で、よくその必要性を理解することが大切です。

まとめ

今回は、女性特有の病気について説明してきました。自治体での検診などを有効に使い、早期発見につとめてください。今まで、コラムをお読みいただき感謝申し上げます。皆様の心と体を「美フレッシュ」させてください。

この記事の著者

岩崎有子(いわさき ゆうこ)

看護師・保健師・公認心理師
ココロト オンラインカウンセラー
ココロト メールカウンセラー

群馬県立福祉大学校保健学科および放送大学教養学部卒業。武蔵野大学大学院修士課程 人間学専攻在学中。旧与野市役所、埼玉県大宮保健所勤務を経て、さいたま市の保健師として18年勤務。現在は看護師添削指導員、地域活動支援センター、就労移行支援事業所、就労継続支援、放課後等デイサービス、NPO活動など様々なフィールドで活動を行う。専門は障害福祉、小児精神保健、障害者の性。