子どもの「できる!」を伸ばす方法【育児に役立つ心理学】

こんにちは。臨床心理士/公認心理師の八木経弥です。

子どもが産まれると、「どんな子になるのかな」「色々なことができるようになって欲しいな」「大人になったら、どんな仕事に就くのかな」など、色々と考える方も多いのではないでしょうか。

本稿では、子ども本人が「できた!」「自分はできる!」という体験をするために、大人である私たちはどのように関わることができるのかについて、お話させていただきたいと思います。

目標はスモールステップで

子どもが何か新しいことに挑戦するとき、私たち大人はつい最終目標を軸にして考えがちです。結果としてそれができなければ「失敗した」と思ったことはないでしょうか。しかし、子どもがいきなり最終目標を達成するというのはかなり難易度の高いことです。

そこで、著者がお伝えしたいことが、「目標はスモールステップで」ということです。

スモールステップとは、目標を細かく分け、簡単にできるものから少しずつ達成していく方法です。たとえば、「平均台を渡りきる」というゴールがある場合、「平均台を一歩進む」というのがスモールステップになります。

この時、「一歩足を出してごらん」と大人が声をかけ、一歩足を出せたら「すごい!できたできた!」と一緒に喜びます。そして「次の一歩、出せるかな?」と声をかけます。そしてそれができたらまた褒める。それを繰り返すことで、ゴールである「平均台を渡りきる」が達成できます。

スモールステップを経て、ゴール達成です。

では、トイレットトレーニングの場合はどうなるでしょうか。

トイレットトレーニングの最終目標は「自分でトイレに行って用を足す」ですよね。ここに至るまでにはいくつかの細かいステップに分けることができます。

トイレットトレーニングのためのスモールステップ例

  • おしっこ(うんち)が出そうだということに気づく。
  • 「おしっこ(うんち)」もしくは「トイレ」と、大人に伝える。
  • トイレに移動する
  • ズボンとオムツを脱ぐ。
  • 便座に座る。
  • 用を足す。
  • お尻をトイレットペーパーで拭く。
  • オムツとズボンを履く。
  • トイレの水を流す。
  • 手を洗う。

ざっくり分けただけでも10個のステップに分けることができました。お子さんによっては、もう少し異なるステップに分けることができるかもしれません。では、この10個のステップですが、これをいきなり全てクリアすることは可能でしょうか?

答えは「NO」です。

ひとつひとつのステップをクリアしていくことで、最終的にトイレットトレーニングが完了します。

スモールステップを進めるコツ

では、どうしたらスモールステップをうまく進めることができるのでしょうか。

親は自分の子どもに期待をかける分、叱咤激励しがちですが、それでうまくいかないとイライラしてしまいます。

子どもは親のイライラを感じ取ると萎縮してしまい、「自分はダメな子」というレッテルを自分に貼り、自己否定する気持ちだけが残り、新しいことにチャレンジする気持ちが出てこなくなります。

そこで著者がお勧めしたいのは、ひとつひとつのステップをクリアするごとに大袈裟なくらいに褒めることです。

おしっこをしたそうに、足をモジモジさせていたら

おしっこが出そうだって感じてるんだね!すごい!自分でわかるんだ!

「おしっこ」と教えてくれたら、

教えてくれてありがとう!

トイレに移動できたら、

トイレに行けるなんて格好良いね。もうお兄さん(お姉さん)だねぇ。

ズボンとオムツを脱げたら、

そっか!もうズボンやオムツも自分で脱げるんだね!

便座に座れたら、

おトイレに座れるなんて、お父さん(お母さん)もびっくりしちゃうよ。

用を足せたら、

おトイレでおしっこすると、お尻も気持ち良いよね。○○ちゃんのお尻、喜んでない?

トイレットペーパーでお尻を拭いたら、

お尻をきれいきれいしてくれて、ありがとう

オムツとズボンを履いたら、

オムツの外でおしっこできたから、オムツを履く時も気持ち良いね!

トイレの水を流したら、

おしっこさんバイバーイってしようね。気持ちよかったね!

手を洗ったら、

完璧!もうおトイレでおしっこできるね!素晴らしい〜!!

上記は全て褒め方の一例です。ですが、これだけ褒められて嫌な気持ちになることはありませんよね。

日常的にトイレに行けるようになると、ついそれを当たり前だと思ってしまい、褒めることがなくなってしまうかもしれません。時々でも良いので、「トイレで用を足している」ということを褒めるようにすると、子どもはモチベーションが保たれます。

これはもちろん、トイレットトレーニングの話だけではなく、ご飯を食べる、歌をうたう、絵を描く、ダンスをする、ピアノを弾く、などたくさんのものに当てはまります。

褒め方のコツ

本稿を読んでいる方の中には「褒めるのが大事なのはわかるけど、どうやって褒めたらいいの?」と戸惑う方がいらっしゃるかもしれません。

その場合、「ズボンやオムツが自分で脱げるんだね」という事実を伝えるだけでも良いですし、「イェーイ!」「やったー!」と言ってハイタッチするだけでも構いません。ハイタッチをすると、お互いに少し楽しい気持ちになりますよね。

そして、ひとつポイントとしてお伝えしたいのは、「望ましい行動があったら、即座に褒める!」ということです。

少し後になってから、「さっきのアレ、よかったよ。」と言っても、子どもはいまいちピンときません。伸ばしたい行動を取ることができたら、即座に褒めることで「これで良いんだ」と思える体験をしてもらいたいのです。

できない課題には補助をする

子ども、特に小さいお子さんは「どんなことでも自分はできる」という万能感を持っています。大人からすると到底無理だと思えることでも、「できる!」と思うのです。

これはとても大事なことで、この「できる!」がないと、挑戦する意欲が湧かないために何もできない子になってしまいます。大抵のお子さんはこの万能感を持っているのですが、多くの失敗体験を重ねることで「自分には何もできない」と自信を失い、何事に対してもやる気が出なくなってしまうこともあります。

それでは、子どもにとって難しい課題に挑戦するときに、私たちは何ができるのでしょうか。

それは、そっと“お手伝いする”ことです。

  • お絵描きしたいけれど、うまく丸が描けない、目が描けないという場合、子どもがクレヨンを持っている手の上から、そっと大人が手を添えてお手伝いをする。
  • ジャンプをしたいけれどうまく飛べない場合には、両手を繋いで一緒にジャンプする。
  • 洋服を自分で着たいけれどうまく着れないとき、そっと服を広げてもつ。

これらのお手伝いをすることで、「手伝ってもらったかもしれないけれど、自分でできた」という体験をすることができます。そして、お手伝いありきだったとしても、できたときにはすかさず褒めてくださいね。このとき、「できたね!でも、今度はお母さんのお手伝いなしで、一人でできるようになってね」など、褒め言葉を台無しにするような一言にはご注意ください。

まとめ

子どもは無限の可能性を秘めています。だからこそ、その芽を摘み取らずに伸ばしてあげたいと思うのですが、現実世界ではうまくいかないことについついイライラしてしまうことが多いのではないでしょうか。

それは、あなたが自分のお子さんのことを想っているから、期待しているからこそです。

子どもの「できた!」「自分にはできるんだ!」という体験を増やすために、そしてそこからもっと多くの可能性が広がるように、手助けしたいものですね。本稿が少しでも皆様のお役に立てたならば幸いです。

この記事の著者

八木 経弥(やぎ えみ)

臨床心理士/公認心理師。心療内科での心理検査や心理カウンセリング、児童相談所の判定業務や教育委員会での教育相談等を経験してきました。 現在、3歳と1歳の娘の育児に格闘しながら、改めて子どもの発達について復習させてもらっています。