⑤職業情報を集めるコツ「わたしの幸せをつくる転職活動」

皆さん、こんにちは。公認心理師/臨床心理士/キャリアコンサルタントの山本智代です。「わたしの幸せをつくる転職活動」をテーマに、効果的な転職活動の進め方について連載しています。

本連載では、キャリア・プランニング・プロセスという方法に則り転職活動を行うことを勧めています。

キャリア・プランニング・プロセス

  1. 意思決定の必要性の自覚・・・転職の必要性を判断
  2. 自己の再評価・・・職業経験の振り返り、興味・能力・価値観の見直し
  3. 職業・仕事の特定・・・職業・仕事の絞り込み(前回)
  4. 選択肢に関する情報収集・・・絞り込んだ職業・仕事の情報を様々な手法で集める
  5. 仮決定・・・ステップ3で絞り込んだ職業・仕事から1つの選択肢を選ぶ
  6. 教育・訓練・・・必要があれば、資格取得やスキル向上の教育・訓練を受ける
  7. 転職・異動・・・ステップ5で選択した職業・仕事への応募、応募書類の作成、面接

前回はキャリア・プランニング・プロセスのステップ3「職業・仕事の特定」の後編として、 周囲の状況を考慮した職業リストを作成し、自分の興味・能力・価値観など自身の強みを生かした職業リストを更にブラッシュアップしました。

前回までの記事をご覧になっていない方はぜひこの機会にご一読いただければと思います。

仕事/就職・転職
①【転職のタイミング】今の仕事に疑問を感じたとき、あなたならどうする 「わたしの幸せをつくる転職活動」
仕事/就職・転職
②【自己の再評価】転職を決めたら、まずやること「わたしの幸せをつくる転職活動」
仕事/就職・転職
③職業・仕事を特定する(前編)「わたしの幸せをつくる転職活動」
仕事/就職・転職
④職業・仕事を特定する(後編)「わたしの幸せをつくる転職活動」

選択肢に関する情報を集める

今回はキャリア・プランニング・プロセスのステップ4「選択肢に関する情報収集」について解説します。

キャリア・プランニング・プロセス(再掲)

  1. 意思決定の必要性の自覚・・・転職の必要性を判断
  2. 自己の再評価・・・職業経験の振り返り、興味・能力・価値観の見直し
  3. 職業・仕事の特定・・・職業・仕事の絞り込み(前回)
  4. 選択肢に関する情報収集・・・絞り込んだ職業・仕事の情報を様々な手法で集める(今回)
  5. 仮決定・・・ステップ3で絞り込んだ職業・仕事から1つの選択肢を選ぶ
  6. 教育・訓練・・・必要があれば、資格取得やスキル向上の教育・訓練を受ける
  7. 転職・異動・・・ステップ5で選択した職業・仕事への応募、応募書類の作成、面接

このステップ4では、ステップ3で選択した職業や仕事に関する情報を集めます。ちなみに、前回例に挙げた医療事務の勤務経験があるDさんの「職業リスト」は下記のとおりです。

これらの職業に関する情報を集めていくのですが、効果的に進めるために、まず以下について整理していきます。

どのような情報を得るか?
1日の行動パターン、メインの仕事の役割、得る必要のある知識やスキル、継続が必要なスキル、報酬、仕事の幅、将来性、家庭生活等への影響度、職場環境、満足・やりがいを感じそうな点、不満足を感じそうな点、その仕事に就いたとき予測される変化、さらに詳しく知るために必要なこと、など
※ 記事後半に、こちらの内容をもとにした「職業情報ヒアリングシート」を掲載しています。

どこで得るか?―モノ・ヒト・体験から得る―
【モノから得る】職業情報関連サイト、企業が発信する情報、メディア、経済誌、ハローワークなどの公的機関(対象者により窓口が異なる場合あり)等が発信する情報など
【ヒトから得る】実際にその職業で働いている人、キャリアコンサルタントなどの専門家から
【体験から得る】セミナー、職場見学、職場体験などから

どのような方法で得るか?
サイト検索、パーソナルネットワーク、セミナーや説明会参加、キャリアカウンセリングなど

職業情報を得るときの留意点

情報は、基本的に「事実」をベースに得ることが重要です。その情報が「事実」に基づく情報なのか、「特定の人の経験」に基づく情報なのかを整理しながら集めるとよいでしょう。実際のキャリアカウンセリングの場面でも、身近な人や家族など特定の人から聞いた情報をそうだと思い込み、多角的に調べることを躊躇される方も少なくありません。

特に人から得られる情報は、その人の主観を排除することが難しいため、「この情報は、この人の見方に基づくものだ。では、自分だったらどうか」というように、例え家族であっても、相手と自分の見方を分けて理解していくことが大切です。できればその相手の「興味・能力・価値観」をある程度知っておくとよいでしょう。人によって、仕事の役割や給与に対する価値観も違うでしょうし、何を目的に働いているかによって仕事で重要視する内容も違います。

                                   

Dさん

相手との違いを認識することで、改めて自分の価値観や能力を知ることもありますね。

職業情報ヒアリングシートを作成する

【人から得る】情報は、以下のように職業情報ヒアリングシート(下記のリンクからダウンロードできます)を作成すると、情報の整理がしやすいでしょう。ポイントは、それぞれの職業について比較検討ができるように、ヒアリングする項目を統一することです。

モデリング(代理学習)し、自己効力感を上げる

「職業選択」に影響を与える要因として言われているのが「自己効力感」です。「自己効力感」は、「自分のもっている能力を使ってある行動をすることができるという強い気持ちもしくは信念」と言われています。転職活動の場面で言い換えると「私の能力を使って、この仕事ができる!」という自分の信念のようなものと捉えてよいでしょう。

現在、この自己効力感は、様々な局面(仕事意欲・行動・業績、リーダーシップ、健康生活など)で大変重要な働きをしていることがわかってきています。そして、この自己効力感の形成や変容に影響を及ぼす要素の一つとして、「モデリング(代理学習)」があります。

モデリング(代理学習)」とは、自分自身が実際に行動しなくても、「他者の行動を観察することによって、その行動を学習すること」を言います。転職活動においては、実際に働いている人の話しを聞き、自分が働くイメージを明確にしていくことも、モデリング(代理学習)の一つと言えるでしょう。

本ステップでは、とにかく自分から主体的に情報を得ていくことが大切です。なかでも、「実際に働いている人」からの情報は大変貴重です。上述したように相手の主観を取り除くことは困難ですし、「興味・能力・価値観」が異なるという前提ではありますが、著者も心理士へのキャリアチェンジの際、知り合いを通じて、あるいは地域の心理士さんに自ら面談アポを取り、3名の方から情報収集を行いました。サイト情報等から得るには限界のあるそのリアリティに富んだ現場の情報は、職業への理解を深め、職業選択の際に大変参考になりました。そこでご縁をいただいた心理士さんは、その後、同じ職場でご一緒する機会があるなど、現在でも大変心強い存在です。


キャリア・プランニング・プロセスの次のステップ5「仮決定」は、「職業選択」の一つとなります。それまでのプロセスでいかに自己効力感を育てていけるかも大切な要素と考えられます。自己効力感を高める一つのモデリング(代理学習)、いわば「働く人へのインタビュー」は、職業選択にとって大切な行動の一つと言えるでしょう。

実際に働く人から情報を得る方法がわからない場合や得た情報を整理しづらい場合は、専門のカウンセラー等に相談してみましょう。カウンセラー自身も各業界の情報やネットワークに精通している場合も少なくありません。

自己実現をし続ける女性たちのメッセージ

著者は現在、自己実現を通してご活躍されている女性をゲストにお招きし、キャリアや生き方を考えるセミナーに携わっています。そこで、自己実現をされている多くのゲストにみられる共通点のうち2つが、本ステップの情報収集に役立つと感じたので最後にご紹介したいと思います。

1. 自分がやってみたいこと、将来の希望は「言葉にして、口に出す」

自分の希望を言葉にして信頼のおける人に話すことで、自分では触れる機会のない情報も、その人のアンテナには触れる情報があります。著者が携わるセミナーのゲストの方々も、自身の興味関心や希望を口に出し他者に伝えることで、様々な情報やネットワークを得て、前に進むことができたと仰っていました。

実際に著者も、職場の休憩スペースでたまたま「就職支援の仕事に興味がある」と話した職場の先輩から、求人情報を教えていただいたのがきっかけで、応募・採用に至ったケースがあります。先輩は、「興味があると言っていたな」というのを思い出して著者に情報を教えて下さったようです。もし私がその先輩に就職支援に興味があることを言っていなかったら、その職を得ることはなかったかもしれません。

2. 仲間を得る

共通の興味関心をもっている人と繋がると、情報を得やすくなるのはもちろん、その人なりの生き方を知ることで、より複眼的・弾力的に自身のキャリア選択を捉えることに繋がるでしょう。キャリアセミナーのゲストの方々も、その時々仲間を得ながら、自身の行動や選択の幅を広げているのが印象的です。

例えば、興味のある分野や関連業界でセミナー開催がされていないか、同じような分野で取り組みをされている人がいないかを検索する、人づてに聞くなどして、積極的にアクセスしてみましょう。そこで得た仲間の存在もまた、きっとご自身が前に進む支えとなることでしょう。

まとめ

転職活動中に得られる情報には限りがあります。一方で、新卒の就職活動のときのように期限がないので、無限に情報収集を行うことができます。だからこそ、ある程度情報収集をする期限を決めて、一定の期間のなかで、得られた情報を整理していくとよいでしょう。

「比較検討できる情報を調べる→聞く・体験する→自分なりに調べ直す」サイクルを繰り返し、積極的に行動し他者と交流しながら、情報をアップデートしたり、はたまた削除したりして、必要な情報の精度を高めていくとよいでしょう。そうすることで、次のステップ5で行う職業の「仮決定」もより満足度が高まることでしょう。

著者プロフィール

山本 智代(やまもと ちよ)

公認心理師・臨床心理士・キャリアコンサルタント
ココロト オンラインカウンセラー

教育系大学を卒業後、人材総合コンサルタント企業での人材育成・派遣事業、教育関連企業での進路セミナーの企画営業に携わった後、官公庁、ハローワークの採用・キャリア支援の勤務を経て心理系大学院へ進学。卒業後は、心理とキャリアに関する専門家として、行政機関での乳児・幼児・児童の発達・教育相談、ハローワークでのキャリア・心理カウンセリング、スクールカウンセラー等に従事。さらに、女性のキャリア、仕事と子育ての両立などをテーマにしたキャリアカウンセリングやセミナーに携わっている。