摂食障害とは何か【わかりやすく解説】

皆さん、こんにちは。公認心理師の林螢子です。本稿では摂食障害について解説したいと思います。

日本では、かわいい洋服が着られる・小顔で痩せているのがスタイルがよい等、スレンダーな女性がよしとされる傾向が強くあり、摂食障害は広い世代に見受けられます。また、女性のみならず男性にも存在し、摂食障害の約1割が男性と言われています。

摂食障害には特効薬はなく、治療法が確立されていない状況ですが、その昔、著者も中学生時代に罹患経験があり、そこから回復し、社会復帰・子育ても経験した立場から、情報共有をいたします。

摂食障害とは

摂食障害とは、厚生労働省のHPによると「食事の量や食べ方など、食事に関連した行動の異常が続き、体重や体型のとらえ方などを中心に、心と体の両方に影響が及ぶ病気をまとめて摂食障害と呼びます」とあり、神経性やせ症・神経性過食症・過食性障害に大別されます。

写真の私が友人より顔ぱんぱんでやせたい、水着になる夏に備えて腕を細くしたい、職場の人間関係で腹が立ってやけ食いする、ポテチを空けたら1袋食べてしまう等々、食べ方や体重・体型にかかる苛立ちや、やってしまった感は誰しもあります。その気持ちやストレス発散ともなる行為と「摂食障害」となる違いはどこにあるのでしょう? 摂食障害に関する情報は溢れていますが、以下にまとめてみます。

摂食障害の特徴①食べることに関する症状

  • 絶食
  • 食事の量やカロリーを制限する
  • 食べることが難しい、または食欲がない
  • 大量に食べてしまい、自分ではコントロールできない
  • 食べたら自発的に嘔吐する
  • 容量以上の下剤・利尿剤や、やせ薬の頻発利用
  • 過剰な運動

摂食障害の特徴②体重や体形、食事への不安、体重や体形への不満

  • 周りからやせ過ぎと言われようが自分ではいい感じ/まだ太っていると感じてしまう(ボディイメージの歪み)
  • 強いやせ願望や体重増加への恐怖(毎日計量する)
  • 食べ物のことが頭から離れない(カロリーや大食い動画や飲食店情報から目が離せない、SNSに食事の投稿ばかりしてしまう、お菓子を作って他者に食べさせ人がカロリー摂取するのが嬉しい等)

摂食障害が及ぼす影響

体重が減っていくと達成感があり、当初は褒められやせてきれいな私になった、食欲から解放されて特別な私になった感じであったのに、食事のことや体重のことから離れられず生理も止まったとなると、どのような心身の状態になるのでしょうか。

こころの問題

  • 自尊心が低い
  • 精神的な苦痛がある
  • 抑うつ気分/不安/気分の変化が大きい
  • こだわりが強くなる
  • 希死念慮(食べ吐きの後は激しい落ち込みの気分になります)
  • 周囲の心配をよそに自分が病気とは思っていない(病識がない)
  • 周囲や社会から孤立している(孤食、本音が語れない、人と比較する)

からだの問題

  • 様々な身体症状(例:疲れる、やたら寒い、うぶ毛が生える、皮膚の乾燥、髪の毛が抜ける、口内炎がよくできる、胃もたれ、便秘、むくむ、風邪を引きやすい等)
  • 極端な体重の増加や減少
  • 月経停止、または生理不順
  • 睡眠の障害

生理が長く止まるのは成長期であれば将来の不妊につながりますし、成人後であると更年期障害のような症状が出たり、骨粗鬆症になりやすいとも言われ、希死念慮や抑うつ気分はそのままにはしておけません。摂食障害は文字通り食べることを拒んだり食べたものを排出し、孤立していくので、「緩慢な自殺」であるとも言われます。

回復のプロセス

厚生労働省のHPには、「影響が大きく、長くならないうちに、摂食障害のサインや症状に気づいたら、できるだけ早く専門家に相談して治療を受けることが大切です」とあるものの、専門家を見つけにくいのが摂食障害です。心療内科や精神科でも「摂食障害は診ません」とHPに表示されていることもままあります。

摂食障害情報ポータルサイトでは、「治療は、食行動の改善、それに伴う身体面の改善(体重増加や月経の回復)、こころや偏った考え方の改善、学校や職場で過ごしやすくなることなどを目標とします。認知行動療法、家族療法などの心理療法が有効とされています」とあります。

中学生だった私自身の経験を言いますと、まだ摂食障害という言葉すらなく、複数の病院を受診し「わからない」と言われ続けた挙句、大学病院の小児科で診断がくだり、国立小児病院に長期に入院するに至りました。当時は優等生の女の子に多く、それは母子関係に起因すると言われていました。

食べられない/食べてしまうという事象に焦点化せず、食べる・食べない等のこだわりを手放せる(卒業できる)ように、ひととつながって、自分を認め、ひとと比較せず、思いを語れる関係性を複数つくっていくのが、回復のプロセスです。

摂食障害の研究者が「食卓状況」という概念を提示しています。摂食障害の当事者に、幼少時からの育ってきた家庭での食卓のようすを聞くと、葛藤の高い「食卓状況」を記憶しているとエビデンスが出ています。食事作法のしつけが厳しすぎた、食卓を囲む家族が不和だった、食卓で注意されることが多かった、孤食だった等々。

いただきます、ごちそうさまと「共食」をするのは人間だけでありますし、家庭をもって子育て中の方には、お子さんが大きくなっても親子が一緒にできる営為は、食事です。「食卓状況」を楽しく、食事を共にする構成員が美味しく楽しく食事ができるのは、関係性構築にも大きいです。

病院以外の相談先

摂食障害について、身近なご相談先としては、地域の精神保健福祉センターが挙げられます。摂食障害は自助グループの歴史が長いので、お住いの地域の自助グループを聞いてみて、当事者の方のお話を聞く、どうすればいい?と先を行く人に問うてみるのがよいです。自助グループはコロナ下になりオンライン開催となっているものが多く、入っていきやすいです。自助グループには当事者のみのセルフヘルプグループと専門家が入るサポートグループの2種類があるので、参加してみると一歩踏み出せます。また、一般社団法人 摂食障害協会のサイト(https://www.jafed.jp/)には情報集約があり、全国5か所に摂食障害治療支援センターがあります。

アディクションに陥らない生き方

現在は摂食障害も依存(addiction)の一分類とされ、「生きづらさ」の表出のひとつとして摂食障害も考えられ、依存症は否認の病、孤立の病、比較の病と言われます。

依存先が多いほうが自立しているという考え方が主流になっています。依存先とは否定されず本音が語れる相談相手を指します。その相談相手が1人ですと共依存となってしまいます。依存先が多いと、きょうはこの居場所のこの人に相談、明日は職場であの人に感情吐露するなど依存先が多いと、分散していき自立につながります。

摂食障害のみならず、アルコール依存、買い物依存、恋愛依存、自傷と、なにかに頼らないと自分が保てない、それを行うことでなんとか自分が保てる、これはだれにでもある傾向だと思います。生真面目で人に頼れない人が依存しやすいと言われており、このくらいの塩梅でいいかなと折り合いをつけて、ちょっと聞いてよと相談できる依存先を増やしながら生きていきたいものです。

この記事の著者

林螢子(はやし けいこ) 公認心理師

360度の感性。ひとが好き、言語化を標榜し、子どもからシニアまで仕事及び社会貢献活動において接しています。民間企業、行政(中央省庁、基礎自治体、法曹領域)、小・中・高校・大学・研究機関、行政委員・PTA会長・同窓会・県人会・学会・NPO等、他領域で活動しています。子育て・看護・介護経験もあり、あらゆる方の困り感に寄り添える自負があります。また、摂食障害をライフワークとしており、食のたいせつさ、アディクションについて伝え続けていきたいです。