①夫の浮気【夫婦間トラブルのケーススタディ】

皆さん、こんにちは。公認心理師の林螢子です。

夫婦間にあるトラブルについてケーススタディで見ていきましょう。人生相談や離婚相談ではありませんので、ご参考程度に、ご自分であればどう考えるか?と読んでいただければ幸いです。

夫の浮気が疑われるケース

桜子さんのケース

桜子さんは金融機関の総合職同期と結婚し、育休中です。第1子出産後、年子で第2子を出産。育休をまとめて取得でき、キャリア形成ビジョンとしてもプラスに捉え育児に専念しています。この秋、夫に海外異動の辞令。育休を延長して同行を決意した桜子さん。営業職の夫は在宅ワークから出勤にシフトし、コロナ下にありながら飲み会や早々と送別会と言って連日遅い帰宅です。夫が泥酔してスマホが見られる状態の夜に、同期女性の美佳さんと親密な関係性が窺われるようなLINEのやりとりを垣間見てしまいました。

同じ職場の同期女性に軽く聞いてみたところ、完全に怪しいと同定。孫に会いに来た義母に話してみたところ、否定され、疑念をもつことじたいが失礼だと怒りを買ってしまいました。

しかし、桜子さんはどうにも、もやもやします。夫に事実を問い糺すとすっきりするのでしょうか。桜子さんの腹立ち、苛々、思い過ごしかもしれない、裏切られた感・・・さまざまな感情が渦巻きます。自分は事実を知りたいのだろうか? 事実を知ったとして、どうするのか? と思いは巡ります。

上記の場合、事実を追究するとどうなるでしょうか?

LINEのやりとりをスクショして夫にどういうことか聞くという手段が先ずあります。

問い糺してみるとどういう展開になるでしょう。夫は怒るでしょうか。スマホを盗み見たと激怒する可能性もあります。謝罪する=認めるでしょうか。認めて謝罪されたら、どういう心境になるでしょう。

夫婦間の高葛藤なやりとりなく事実を知るには、興信所という調査機関もありましょうが、かなりの費用がかかるものであります。何事もなかった思い過ごしだったと判明すれば、すっきりしましょう。想起したくない事実が判明したとして、その後どうするかを考えておく必要が生じます。

その事実を突きつけて、夫婦の関係性を再構築する機会とするのか? 事実の内容によって、さらに夫の態度いかんによっては、離婚や別居等を考えるのか。その先には、証拠をもとに、家庭裁判所での調停(婚姻関係の調整、または離婚)を有利に進めるまでを考えるか。別居であれば婚姻費用の請求、離婚であれば、慰謝料、親権・監護権、養育費等を請求し、面会交流等を決めていくか。さらに、不貞の相手が同定されたら、謝罪を求めたり慰謝料等を請求するか。弁護士を依頼して手続きにあたってもらうか、と、次なる事柄が発生します。

調停は申し立てて受理され、第1回目の調停期日が決まるまで期間を要します。

調停手続きについて知りたい場合、お住いの家庭裁判所に問い合わせると教えてくれます。また、東京都にお住まいであれば、東京都女性相談センター、ウィメンズプラザに女性専用の電話相談窓口、対面での弁護士相談等があります。東京都女性相談センターには、特別相談窓口があり、家庭裁判所調査官等を歴任した女性専門相談員が調停手続きや法律相談に対応してくれます。

また、お住いの自治体には男女共同参画センターがあり、女性相談という窓口があり、相談対応をしています。弁護士を立てるとすると、法テラスという弁護士相談の窓口がありますが、相談できる信頼に足る弁護士を探すには、エネルギーを要するものです。このように書いていくと、事実を解明するのは、エネルギーと時間と費用がかかり、2児の子育て中の桜子さんの現状を踏まえると、あまり得策ではないかもしれません。

では、どうすれば、もやもやが晴れ、夫と海外駐在に向けて家族4人で進もうと思えるでしょうか。

夫婦間のコミュニケーションを見直す

夫婦間のコミュニケーションを見直し、関係性の再構築を図る契機とできる可能性があります。過去と他人は変えられないので、自分を顧みて、自分が機嫌よく過ごしていける方法を考えていくのが得策と思われます。

桜子さんは多忙な総合職の日々から妊娠・出産によって家庭で子育てに集中し、第1子の断乳ができたと思ったところで第2子の出産、2子の育児、コロナ不安もあり外出もままならず、子育てを任せきりの夫とのコミュニケーションに齟齬が生じていたかもしれまぜん。子育て上の連絡事項のみがコミュニケーションの内容になっていたかもしれません。夫の行動や発言に信頼がもてないのも、このところ、子どもの話以外しておらず、わかってくれない、やってくれない、自分ばかり仕事をして外で好き勝手に過ごしていると他罰的な捉え方になっており、「Youメッセージ」で夫に相対していた可能性もあります。

Youメッセージとは、その原因はあなたにある、あなたが悪いというあなた主語のメッセージです。「きょうも帰ってくるのが遅かった」「約束したのに守ってくれなかった、いつもあなたは嘘をつく」という言い方が「Youメッセージ」で、責められていると相手は感じます

「早く帰ってきてくれると私は嬉しい、助かる、子どもが喜んでいる」「帰ってくる時間が聞いていたより遅いと、私はとても心配だった」「約束を守ってもらえなくて私は悲しい」という私主語の言い方が、「Iメッセージ」です。Iメッセージのほうが伝わると言われています。お子さんに対しても「Iメッセージ」で伝えましょう。

「言い訳」「嘘をつく」というネガティブな用語も、建設的なコミュニケーションにつながりません。嘘をついた、のではなく、そのときはそうしようと思っていた、とも考えられますし、自分が、言い訳、愚痴、嘘つきと言われると、そこで思考が止まり、対話が違った方向に流れていきます。ネガティブな表現を使うと、発する自分がいちばんその言葉を聴いているわけです。自分で自分にネガティブな言葉を言い聞かせる必要はありません。

ふたりの関係性に、すぐに解決策が見えたり、好転するとはいかないものでありましょう。

しかし、「Iメッセージ」でのコミュニケーション、夫のDoing(例:夫の収入があがった、夫の業績があがり栄転した、マンションが購入できた、プレゼントを買ってくれる等)ばかりを見ず、お互いのBeing(例:パパが帰ってきてくれると私も子どもも嬉しい、きょうもよくやってくれてありがとう等)を認め合う関係性を考えてみてはいかがかと思います。

1日中在宅で育児をするのは多大なエネルギーを要し疲労困憊するものであります。そのなかで笑顔を創出するのはいっそうのパワーを必要としますが、夫やお子さんに相対する表情が、眉間に皺、疲労困憊顔では、夫もお子さんもその表情に影響されます。口角を上げて、ポジティブな言葉を発すると、自分の機嫌もよくなっていくのではないでしょうか。

自身のストレスコーピングのレパートリーを増やしていくと、心に余裕も生まれますし、身体化が防げます。スマホやネットの閲覧時間が長いと、表情ものっぺりしがちです。ストレスコーピングについては、別途、お伝えをしたいと思います。

夫の行動に不安を感じるとき、解決策がすぐに見つかるのもではありませんが、夫婦間のコミュニケーションを点検することは、ご自身にとっても役立つと思います。

この記事の著者

林螢子(はやし けいこ) 公認心理師

360度の感性。ひとが好き、言語化を標榜し、子どもからシニアまで仕事及び社会貢献活動において接しています。民間企業、行政(中央省庁、基礎自治体、法曹領域)、小・中・高校・大学・研究機関、行政委員・PTA会長・同窓会・県人会・学会・NPO等、他領域で活動しています。子育て・看護・介護経験もあり、あらゆる方の困り感に寄り添える自負があります。また、摂食障害をライフワークとしており、食のたいせつさ、アディクションについて伝え続けていきたいです。