あなたはどこまで知っている?正しい性の知識をテストしよう【女性のための保健体育】
みなさん、こんにちは。公認心理師・保健師の岩崎有子です。
これから数回にわたり、「女性のための保健体育」というテーマで人にはなかなか聞けない性の知識について看護師・公認心理師の立場から解説していきます。ちなみに著者は、この業界で「性の伝道師」と呼ばれる国立保健医療科学院思春期保健コースを修了しています。性の話をみなさんが親しみやすい身近な話題としてお届けするつもりですので、宜しくお願いします。
第1時限目は「あなたはどこまで知っている?正しい性の知識をテストしよう」です。
より豊かで楽しいセックスは、体への正しい知識があってこそですね。避妊に性感染症予防、お手入れ方法までの理解度を、まずは○×クイズでチェックしてみましょう。
正しい性の知識をテストしよう
それでは、さっそくあなたの理解度をチェックしてみましょう。理想は全問正解です。思春期の人だと、少し間違えてしまうかも知れませんね。
Q.01 排卵は月経中に起きる。
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A.01 ×
月経中に、排卵はありません。
月経中は比較的妊娠しにくい時期ですが、妊娠のリスクはあります。排卵は同じ間隔で起きるとは限りませんので、月経中の避妊も必須です。月経周期が安定していない人なら、なおさら注意が必要です。また、月経中のセックス子宮内膜症の原因になるという説もあります。
Q.02 避妊は男性だけに任せてはいけない。
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A.02 〇
避妊は二人で協力しあうものです。
人生設計を考えるうえでも、妊娠するかしないかは重要なこと。女性が自分でコントロールしていくことが、欠かせません。しかし女性だけが負担を抱える必要はないと考えます。セックスは二人にとって大切なことですから、避妊についてもパートナーと相談をしましょう。ちなみに外出し(膣外射精)は効果ナシ。
避妊の方法としてはコンドームとピルがよく知られていますが、コンドームは避妊の失敗率が3~14%と高く、途中で取れないようにきちんと着け、性交の最初から最後まで着けることがマストです。それに対し、ピルは非常に高い避妊効果がありますが、まだまだ浸透していないのが現状です。女性主体の避妊法として、ぜひ選択肢に入れてほしいです。しかし、避妊効果が低くてもパートナーの意識(要するに女性の心と体を大切にするということ)によって、コンドームは必須です。
Q.03 ピルは正しく飲めば、ほぼ確実に避妊できる。
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A.03 〇
現在、日本で誰もが利用可能な避妊法の中で最も効果が高いのはピルです。
正しく飲めばほぼ確実に避妊できますが、飲み忘れてしまうと「すり抜け排卵」で妊娠の可能性が高まるので注意が必要です。一日の中で、飲むタイミングを決めるといいでしょう。ピルは月経困難症や子宮内膜症などの婦人科系トラブルの改善にも効きますし、卵巣がんや子宮体がん、乳がんのリスクを下げることも分かっています。
気をつけるべき大きな副作用に血栓症が挙げられますが、35歳未満でたばこを吸わない人のリスクは低く、血栓症の予兆である手足や胸、頭の痛みが出たらすぐに相談できる窓口も製薬会社が整えています。飲み始めの6か月間に何ごともなければ、ほぼ大丈夫でしょう。筆者は、20年以上服薬しましたが、特別な副作用はありませんでした。しかし、ホームドクターが大切だと思います。何かあったらすぐに相談できるか関係を作って下さい。
Q.04 ピルを飲んでいると、将来妊娠しづらくなる。
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A.04 ×
飲むのをやめれば、排卵が起こります。
意外と多いのが、この誤解ですね。ピルには体と同じ2種の女性ホルモンが含まれ、それが脳の下垂体に働いて排卵をストップさせている。飲むのをやめればこの指令がなくなる排卵が起こります。ピルには子宮内膜症を改善する働きもあるし、子宮の状態を良くするという意味で、むしろ妊娠にはプラスになると考えられます。
Q.05 避妊に失敗しても、72時間以内なら妊娠を避ける方法がある。
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A.05 〇
ピルを飲み忘れていた、コンドームが破れた!そのようなときは、24時間以内に緊急避妊用のアフターピルを処方してもらう方法もあります。対応可能な婦人科は、ネットでも探せます。日本で処方されるアフターピルは1回の服用で済む錠剤で、吐き気などの副作用も少ないです。しかし、1万5000円程度かかり、100%避妊はできないうえに、体への負担もゼロではありません。避妊失敗時の緊急用として覚えておき、やはり普段の避妊を確実にしておくことがベストです。
Q.06 妊娠検査薬はセックス直後に使っても、正しい結果は出ない。
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A.06 〇
結果が出るのは、セックスの後3週間経ってからとなります。尿で妊娠の可能性が分かる検査が受けられます。市販の妊娠検査薬も手軽ですね。もし検査薬で陽性と出ても、正常な妊娠とは限らないので、まずは受診をしましょう。
Q.07 互いに浮気していなければ、性感染症の感染の危険はない。
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A.07 ×
お互い症状もないし、病気とは無緑と言いたいところですが、ウイルスや病原菌に感染しても気付かないケースも多いですし、以前のパートナー経由でもらったものを、相手に移している可能性もあります。いつ感染したかは特定できないし、誰でもかかる可能性があるのが性感染症。パートナーが変わったら二人で検診を受けるのがおすすめ。婦人科のほか、自治体の保健所で実施している検査なら無料・匿名で受けられる項目※もあります。
※ 保健所により異なるが、HIV、梅毒、B型肝炎、クラミジア等の検査を実施しています。最寄りの保健所にご相談ください。
Q.08
性感染症はコンドームで100%防げる。
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A.08 ×
コンドームは大事ですが、防げないものもあります。
例えば性器ヘルペスや梅毒は、性器以外の場所にできた水疱や潰瘍が皮膚に接触することでも移ります。とくに梅毒はここ数年、若い女性の間で爆発的に感染者が増えている病気です。初期はしこりや発疹などの症状が皮膚に出ますが、診療経験のない医師が多いために梅毒と気付かれず、治療がきちんとされないケースがあることも一因かもしれません。しかし、放置すると、脳や心臓に重い合併症を起こすこともあります。
さらに、WHOは、抗生物質に耐性のある、いわゆる「スーパー淋病」を2017年に発表しています。全世界的な脅威な事態となっています。
Q.09
ピルには、性感染症を予防する効果もある。
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A.09 ×
避妊はできても病気は防げません。
残念ながらピルには性感染症を予防する効果は一切ありません。世界的に見て、ピルを飲んでいる人の卵巣がんや子宮体がんは減少傾向にありますが、子宮頸がんは増えています。これは、コンドームを使わなくなることが原因だと考えられます。ピルを飲んでいる人はそれで安心せず、性感染症予防のために必ずコンドームを使うように心がけましょう。避妊も性病もパートナーとの協力が必要です。
Q.10
性感染症にかかっても、必ずしも症状が出るとは限らない。
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A.10 〇
症状が出にくいからこそ、定期検診が大事です。
女性はとくに体の構造上、性器の内部で炎症が起きても気付きにくいのです。年に1度は婦人科検診を受けましょう。もし性感染症にかかったら、彼(夫)と二人で治療を。「男性は尿で原因菌やウイルスが洗い流されて、検査で陽性反応が出ないこともありますが、必ず治療を受けてもらってください。
Q.11
今は性感染症で命を落とすことはない。
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A.11 〇
死ぬことはないけれど、一生付き合うことになる可能性はあります。
基本的に性感染症で命を落とすことはありませんが、HIVや性器ヘルペスなど、一生付き合わなければならないものもあります。また、クラミジアのように将来の妊娠に関わる病気もあります。どの性感染症も、生活の質を著しく落としますので、死に至らないからと油断してはいけません。さらに、性行為で感染するHPVが原因とされる子宮頸がんのような病気もあります。頸がん自体は早期に発見すればほぼ100%治る病気ですが、進行すると命に関わることもあります。また、肝硬変などを引き起こす可能性のあるB型肝炎のウイルスも、輸血や母子感染のほか、性交渉によっても感染します。命を脅かす病気があることも忘れないでほしいです。
Q.12
予防接種で防げる性感染症がある。
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A.12 〇
子宮頸がん・B型肝炎予防ワクチンは、アラサーでも受けられます。
現在日本では、子宮頸がんの原因とされる15種類のHPVのうち、主要な2つの型に対する予防ワクチンを受けることができます。性交経験前に打つほうが有効ですが、ウイルスに感染していないことが分かれば、性経験があっても接種する意義はあります。HPVのワクチンの有効性と、副反応を理解した上で、接種してください。
Q.13
膣の中までしっかり洗うほうが清潔を保てる。
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A.13 ×
中まで洗うのはNGですが、デリケートゾーンを洗うのは必須です。
きちんと洗えていないことで、かゆみの原因になります。自分で性器を見たことがないという人は、まずは膣まわりの構造を知ることが重要です。膣のまわりには恥垢(白く固まった垢)が溜まりやすく、お湯で洗い流すだけでは不十分。デリケートゾーン専用ソープを泡立てて、大陰唇と小陰唇の間、クリトリス、肛門まわりに手を添えて優しく洗います。その後、ローションやクリームで保湿をしましょう。膣の中には自浄作用を持つ常在菌がいるので洗う必要はありません。
Q.14
セックスすればするほど、膣は緩む。
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A.14 ×
セックスをすればするほど弾力が増します。
セックスをしすぎると膣が広がり、緩むのではと心配する人もいますが、刺激を受けると膣内部や会陰の血流がアップします。すると、まわりの筋肉もほぐれて、相手に合わせられる伸縮性に富んだ膣になります。更年期には女性ホルモンが減少し、膣内の乾燥や萎縮がみられますが、若い人でも過激なダイエットやストレスが原因で、粘液の分泌量が減ることもあります。粘液の減少は性交痛の原因にもなります。指が一本も入らないようなら、一度婦人科で診察を受けた方が良いでしょう。
デリケートゾーンのケアとして、膣や会陰部をオイルでマッサージすることで、ふっくらとしたハリが生まれ、柔らかくなります。ケアをした後にトライしたいのが伸縮性のある膣を作るトレーニングですね。骨盤底筋運動といいます。子宮や膀胱を支える骨盤底筋群を鍛えることで、締まり具合のいい膣になります。立って息を吐きながら、膣を引き上げるように締め、3秒ほどキープ。移動中の電車の中でもできます。
Q.15
濡れないときはあって当然である。
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A.15 〇
濡れないときはあって当然です。安心してください。
体調や精神的な状態や、疲労に左右されます。汗かきの人とそうでない人がいるように、膣の粘液量は個人差があります。体調や月経周期によっても変化します。ストレスを抱えていたり、疲れが溜まっているなど精神的に緊張状態が続いていると濡れにくくなる場合もあります。濡れない自分はおかしいと思わずに気軽にローションを使ってみるのもオススメです。筆者は日本家族計画協会のリューブを使っています。決して広告ではないのですが、刺激もなく自然な感覚が気にいってます。
Q.16
女性も性欲が高まることがある。
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A.16 〇
女性も性欲が高まることがある
性欲の強さは人それぞれ。排卵前に高くなる傾向があるという説があります。しかし、性欲にはエストロゲンという女性ホルモンが深く関わっており、その分泌量は人によって差があります。また生理によってホルモンバランスが変化するため、性欲には波が出やすいのです。一般的には、生理直後から排卵前にエストロゲンの分泌量が増え、男性を受け入れる準備が整って妊娠しやすい体になります。そのときに性欲のピークを迎えることがあるので、先ほどの排卵前の性欲説があるのでしょう。
Q.17
ひとりHは毎日してもよい。
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A.17〇
もちろんOKです。パートナーがいなくても感じることは大切です。
ひとりHをすると罪悪感を抱く人もいますが、自分の想像と快感に浸れるプライベートタイムと捉えてみましょう。気分転換の一環で、気負わずに”気持ちいいからする”という欲求に素直になりましょう。自分の感じるポイントを知ることはセックスの満足度にもつながります。感じやすい場所は主にクリトリス派と膣内のGスポット派に分かれます。マスターベーションをすることで、どちらでエクスタシーを感じやすいのかが分かります。まずは”イク”感覚を体に覚え込ませること。そのうえでパートナーに自分の感じやすい場所を伝えれば、”セックスでイキにくい”といった悩みも解消されやすくなるはずです。 行う際は、爪を短く切った清潔な手でしましょう。濡れにくい場合はローションをほんの数滴使うだけで十分潤い、快感が得やすくなります。ただし、デリケートゾーンは経皮吸収率の高い場所です。安心な成分のものを選びましょう。
まとめ
今回は「女性のための保健体育」というテーマで人にはなかなか聞けない性の知識についてクイズを受けていただきました。いかがでしたか?正しい性の知識をもとに、豊かで楽しいセックスをしていただければと思います。セックスの話題はタブーだと考えてしまいがちです。少しでも、皆さんが親しみやすい身近な話題としてお届けしていきます。
しかし、性の話題がとても大切なことは、「自分の体を理解するということ。」そして、その究極の目的は、「自分自身の体を大切にすることなのです。」知識をきちんと知っておいていただきた上で、適切な行動をとっていただければ幸いです。