①自閉スペクトラム症の特徴とは【当事者による大人の発達障害講座】

発達障害の当事者であり、支援者の私

みなさん、こんにちは。私は田中竣也と申します。

都内の放課後等デイサービスで児童指導員ならびに心理職として働く公認心理師です。
臨床心理学の観点から発達障害や知的障害を持った子どもたちの支援に携わっており、ABA(応用行動分析)や太田ステージといった手法やツールを用いながら、子どもたちの療育やアセスメントに携わっています。

一方で、私も自閉スペクトラム症(ASD)注意欠如・多動症(ADHD)の診断を受けている発達障害の当事者でもあります。

ここ数年で広く認知されてきた発達障害

発達障害は、ここ数年で広く知られるようになってきました。

それに伴い、発達障害の当事者、自分自身が発達障害ではないかと考えている人、発達障害の当事者の支援にあたる人、これから発達障害に関して勉強をはじめる人など、様々な形で発達障害に関わる方がいらっしゃることと予想します。

このコラムでは、発達障害の当事者・支援者としての視点から、分かりやすく、かつなるべくリアルに書いていこうと考えています。

発達障害に関わる多くの人たちに私の経験がお役に立てればと思います。

自閉スペクトラム症の特徴

「発達障害」と一口に言っても、発達障害には自閉スペクトラム症、ADHD、LD(学習障害)など様々な種類があります。

今回は、私の主診断である自閉スペクトラム症(以下、ASD)の特徴を、私自身の経験を踏まえて紹介していきたいと思います。


ASDの大きな特徴は、以下の3つと言われています。

① コミュニケーションが独特(不得意)
② 相手の気持ちを想像することが難しい
③ こだわりが強い

以下、1つずつその特徴を見ていきたいと思います。

ASDの特徴① コミュニケーションが独特(不得意)であること

発達障害、とりわけASDの人は、人とコミュニケーションを取ることを苦手とする、いわゆる「コミュ障」な人や、自分の殻に閉じこもっているタイプの人が多いとイメージする人が多いかもしれません。

私の場合は、割とコミュニケーションを取ることには積極的だったりします。心理職という人と関わりを持つ必要のある仕事をするにあたって、「コミュ障だ」などと言っていられないため、意識して積極的になっている部分はありますが。

ただ、積極的過ぎて相手との距離感が近すぎて失敗してしまうことがあります。皆さんの周りにもいないでしょうか。人との距離感が近すぎて少しこちらが引いてしまうタイプ

僕はそのタイプかもしれません。関係性の割に距離感が近い、馴れ馴れしいと感じる、それゆえ引いてしまう。もっと言えば、距離感が近すぎてキモい…。

ASDにも、孤立型、受動型、積極奇異型といったいくつかのタイプがあるとされます。

孤立型…独りでいることを好むタイプ
受動型…他者からの働きかけには応じるが、自分からは動かないタイプ
積極奇異型…積極的に関わるが、どこか変わっているタイプ

いわゆる「コミュ障」な人が孤立型、大人しくて人に流されがちな人が受動型だとしたら、現在の私は、積極奇異型のように思います。

どのタイプにせよ、コミュニケーションの取り方が独特で、上手に取れていない意味では不得意なのだと思います。

ASDの特徴② 相手の気持ちを想像することが難しい

ASDの人には、相手の気持ちを想像することが難しいために、悪気なく相手を傷つけたり、戸惑わせたり、怒らせたりするようなことを言ってしまう人がいます。

分かりやすい例を挙げるなら、太っている人に対して「あなた太ってるね」と言ってしまうなど。

ですが、決して相手を傷つけようといった意図はなく、思ったことを馬鹿正直に伝えてしまっているだけなんです。

私も以前はそのような傾向があり、気づかず、悪気なく人を不愉快にさせていたことがあったようです。今は30年生きてきて、どのような言葉が人を傷つけるから言わない方がいいかはわかってきましたが。

ですが、まだこの特徴が消えた訳ではなく、今でも時々現れることがあります。

悪口ではないことも、伝えたら人を戸惑わせることがある。それをおぼえること。

これが最近の私の課題だと思っています。


他者の意図や願望、考えや思いといった心の状態を理解する能力のことを心理学の用語では「心の理論」と呼びますが、ASD当事者には心の理論に苦手さのある人が多いといった特徴が挙げられます。

私の場合も、心の理論がまだまだ発達途上なのかもしれません。人の心と関わる仕事をしながらも、心の状態を理解する能力に難がある。公認心理師として働くにはなかなか苦しいハンディキャップを持つ私ですが、失敗を積み重ねて学びながら生きています。

ASDの特徴③ こだわりの強さ

ASDの特徴の3つめは、特定の物事やルールなどに関して、強いこだわりを持ってしまうことが挙げられます。

たとえば、私の場合、服の組み合わせへのこだわりがあります。

いつものストライプのカットソーに、いつものネイビーのジャケットを着て、いつもの黒いズボンを履いて、いつもの青い帽子というように、ある決まった組み合わせでなければどうしても違和感があり、嫌で嫌でたまらないのです。ですので、家ではパターンごとに服を組み合わせてハンガーにかけておき、その組み合わせで着られるようにしています。

合理的な理由はないのですが、どうしても「いつもの」組み合わせにこだわってしまう。うっかりでも、その「いつもの」組み合わせを破ってしまうと、なんか嫌でイライラしてしまうのです。


また、急な予定変更が苦手です。

現在の仕事において、子どもたちの送迎の順序が急に変わったり、1日の活動の流れが急に変更になったりすると、子どもたちを見守る立場でありながら、内心はイライラしたり焦ったりしてしまいます。

「いつもの」流れや手順、あるいは事前に聴いていた流れや手順が、イレギュラーにより乱されてしまうと、見通しが立たずに自分自身の心の中まで乱されてしまう…。

そんな「いつもの」に対するこだわりがなければ、もっと楽に生きられるのにな…と思いながらも、やめられないから我ながら困ったものです。

おわりに

以上、ASDの特徴について、私の実体験を踏まえてご説明しました。

次回は、ADHDについて私の経験を踏まえてお伝えしていきたいと思います。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

この記事の著者

田中 竣也(たなか しゅんや)

発達障害児の療育に携わる公認心理師です。また、自身もASD、ADHDと診断された発達障害の当事者でもあります。
発達障害の当事者と支援者、療法の視点から情報を発信したいと思います。宜しくお願いします。