②注意欠陥多動症の特徴とは【当事者による大人の発達障害講座】

皆さま、こんにちは。公認心理師の田中竣也と申します。前回から引き続き来てくださった方も、初めましての方も、このコラムを読んでくださりありがとうございます。

前回もお伝えしましたが、私は公認心理師でありながら発達障害(ASD、ADHD)の診断を受けている当事者でもあります。今回も、発達障害に関して、当事者と支援者、両方の視点からお伝えしていきたいと思います。

注意欠陥多動症の特徴

今回は、私の診断の一つである注意欠陥多動症(以下、ADHD)の特徴について、私自身の経験を踏まえながらご紹介します。

ADHDの大きな特徴は以下の3つであると言われています。

①不注意:忘れ物や失くし物が多い、不注意な間違いをする、集中しつづけることが難しい
②多動性:常にソワソワしていて落ち着きがない、座り続けていられない、話し出すと止まらない
③衝動性:我慢ができない、思いつきで行動してしまう、順番を待つことができない

また、上記の特徴の表れ方によって、不注意の特徴が強く現れる不注意優勢型、多動性と衝動性が強く現れる多動・衝動性優勢型、3つの特徴が重なって現れる混合型の3つに分けられます。(ちなみに、私は不注意優勢型と診断されています。)

では、3つの特徴をひとつずつ見ていきましょう。

ADHDの特徴①不注意

忘れ物や失くしものが多い

忘れ物をすることや、必要なものを失くすことは誰にでもあると思います。
しかし、不注意のADHD傾向がある場合、忘れ物や失くし物が人と比べて明らかに多くなります。

私の場合、小学校の頃は特に顕著で毎日のように忘れ物をしていました。宿題のプリント、筆記用具、教科書などなど…。

「昨日、ランドセルに入れたはずなのに…」と思っていても、学校に来るとなぜか必要なものが入っていないことが、小学校6年間の中で数えきれないほどありました。そのため、家に電話をして、祖母に忘れ物を学校に届けてもらうなんてこともしばしば。

また、当時は児童会に所属していたのですが、全校朝会で話す内容が書かれた原稿を家に忘れてしまい、パニックになってしまったこともありました。そんなエピソードが重なり、通信簿には毎年、「忘れ物が多い」と書かれていたように思います。


集中が続かない

不注意のADHD傾向があると、集中力の問題が現れることもあります。

私の場合、学校や塾の授業や大学のゼミ、大学院のケースカンファレンス、職場での会議など、気が付くと別なことを考えていることがありました。
同じ場所にじっと座りながらひとつの物事に耳を傾け続けたり、転々と変わる話題について行ったりすることに疲れてくると、ふと別な物事や刺激に思考が行ってしまう感じです。

よく、上の空だとか、ニヤニヤしているなどと指摘を受けていました。

ADHDの特徴②多動性

落ち着きがない。ソワソワしている。なんだか挙動不審に見える。常に動き回っている。ADHDの傾向のある人は、そのような特徴がみられることがあります。

いつも身体を動かしてしまう

たとえば、私の場合、頭の中に常にBGMが流れています。お気に入りの音楽が頭の中で流れてくると、そのリズムに乗って首や手足など身体のどこかを動かしてしまいます。特に、私はアニメが好きでよくアニメソングを聴くのですが、1つのアニメにハマってしまうと、数日間は頭の中で常にそのアニメの主題歌が流れてきます。

学生時代、自分では気づかないうちに、鼻歌を歌いながら勉強や作業をしていると指摘されたことが何度かあります。頭の中で流れるBGMに合わせながら、知らないうちに声に出ていたのかもしれません。


落ち着きなく走り回る

また、私が子どもの頃はじっとしていることが難しく、落ち着きなく走り回っていました。

たとえば、病院に行くと、待ち時間が退屈で院内のあちこちを冒険気分で探索したり、立ち入り禁止だった2階に何度も入ろうとしたりと、静かに座って待つことができませんでした。

病院という場所は静かに待つべき場所だと理解はしていたのですが、それでも、院内のいろいろな物が気になって、「何だろうこれ?」「あそこには何があるんだろう?」と探求心や冒険心のような感情のままに動いていました。

「動いてはいけない」「静かにしなくてはいけない」ことは分っているのに、目の前に気になるものがあると、そのことはすっかり忘れて冒険に駆り立てられてしまう。だから、静かに待っていることができない、そんな感じです。

ADHDの特徴③衝動性

衝動を抑えられない

「衝動買い」という言葉があります。商品を見た瞬間に「欲しい!」という欲求が抑えられず、後先考えずに買ってしまう。そんな経験のある人も少なくないのではないでしょうか?

私も我慢ができずに衝動買いをしてしまうことが時々あります。最近も、本屋さんで自分の仕事や専門に関係のある本で、面白そうなものを見つけてしまい、「仕事で使う本だから…」と言い訳をして、給料日前でお金があまりないのが分かっているにも関わらず買ってしまいました。

また私の場合、ストレスが溜まると、やけ食いや、やけ酒に走ってしまうことがあります。出費が増えることや健康に悪いことが分かっているはずなのに、どうしても、「食べたい!」「飲みたい!」という欲求が抑えられなくなってしまうことがあります。後で困ることはわかっているのに、どうしても欲求を満たすことを抑えられないのです。


思いつきで行動する

ADHDの多動・衝動性がある場合、思いつきで行動してしまうこともあります。

最近のことですが、私の職場で対応に苦慮するお子さんがいました。その際、学校ではどのように対応をしているのだろうと気になり、意見交換をしたいと考え、思いつきでその子の通う学校の担任の先生に電話をかけたことがありました。ただ、時間を見ずに電話をかけたら17時過ぎており…。担任の先生は親身になって相談や情報共有をしてくださいましたが、忙しい中、遅い時間に突然電話をかけてしまい、先生を困惑させてしまったかもしれない…と反省しています。

思いつきのエンジンがかかると目標を達成するまで突っ走ってしまい、時に空回りをしてしまう、そんな特徴があります。

ADHDの特性をどのようにコントロールしているか

私には、上述したADHDの特性のため、仕事や社会生活で困ってしまうことも少なくありません。

現在、ADHDの特性から来る症状を抑えるため、私はアトモキセチン(商品名:ストラテラ)というお薬を飲んでいます。お薬を飲むことで、上述した衝動買いやヤケ食い、ヤケ酒をすることが少なくなったように思います。また、仕事において少し集中力が上がったようにも思います。

お薬を飲むこともひとつの手段ですが、生活において不注意による失敗を減らしたり、多動性・衝動性を防ぐ工夫をすることも必要と考えます。

今後のコラムにおいては、発達障害を持つ私がどのように工夫をしながら自分の特性と共存しているのかを紹介していきたいと考えています。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

この記事の著者

田中 竣也(たなか しゅんや)

発達障害児の療育に携わる公認心理師です。また、自身もASD、ADHDと診断された発達障害の当事者でもあります。
発達障害の当事者と支援者、療法の視点から情報を発信したいと思います。宜しくお願いします。