②月経(生理)のトラブルの原因とセルフケア 【私の体と心を知ってもっとキレイになろう】

皆さん、こんにちは。保健師・公認心理師の岩崎有子です。

今回のテーマは「月経(生理)のトラブルの原因とセルフケア」です。専門的な立場から、月経のトラブルについて解説します。なお、前回の記事「①知っているつもりの女性ホルモン」を読んでおくと、より理解が深まります。お時間があれば一読してみるのもよいかもしれません。

女性の体と心
①知っているつもりの女性ホルモン 【私の体と心を知ってもっとキレイになろう】

月経痛(生理痛・月経困難症)

月経痛はなぜ起こるのでしょうか?

程度の差はありますが、8割近くの人が月経痛を感じています。月経中は、子宮の中を覆っている内膜や月経血を体外に押し出すために、プロスタグランディンというホルモンが分泌されて子宮を収縮させます。月経痛は、この収縮の刺激が痛みになって表れたものです。

月経中はホルモンのバランスが崩れるので、月経痛以外にも吐き気、めまい、むくみ、貧血などの体の症状や、イライラ、憂うつ、あせりなど、心の不調も伴います。症状は、月経開始の1~2日にもっとも強く出ますが、だんだんと解消されていきます。

ワンポイント
月経痛は、原因になる病気がない場合と、子宮や卵巣の病気が原因で起きる場合があります。病気がない場合はプロスタグランディンというホルモンが過剰に分泌されたり、子宮や卵巣が十分に発育していない、冷えや疲労、ストレスなどが原因になります。病気による月経痛の場合は、子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣のう腫などが原因になっていることがあります。子宮や卵巣の病気は中高年の病気と思いがちですが、近頃は20歳代から増えているので注意が必要です。

月経痛の症状とは

月経痛とは、下腹部痛や頭痛・腰痛、吐き気など、月経時に起こる不快な症状のことです。

月経時に起こる症状で最も多いのは下腹部痛ですが、頭痛や腰痛、吐き気、 手足の冷えなどを訴える人もいます。こうした症状は女性であればほとんどの人が経験しているものですから、日常生活に支障がない程度であれば心配する必要はありません。

しかし、「月経が始まると毎回寝込んでしまう」「痛みで仕事や家事が手につかない」「鎮痛剤が全く効かない」など、日常生活に支障をきたすほどの症状がある場合は、どうでしょうか。

月経時の症状がひどい場合を「月経困難症」と言います。月経困難症は、背景に病気がある場合とそうでない場合に分けられます。10代のころは子宮や卵巣が未成熟なために月経痛が起こる場合がほとんどです。

20代になるとホルモン分泌が盛んになり、プロスタグランディンというホルモンが過剰に分泌され、月経痛が起こりやすくなります。20代になって月経痛がひどくなったという女性も少なくありません。30代になると月経痛が軽くなる女性も多いのですが、子宮内膜症や子宮筋腫など、月経痛を引き起こす病気の発症率は増加します。

下記の症状がある方は我慢せず、医療機関を受診しましょう。

・月経痛や月経の量がだんだんひどくなる。
・月経血にレバーのようなかたまりが混じる。
・鎮痛剤が手放せない。
・鎮痛剤を規定量飲んでも効かなくなった。
・毎回、寝込んでしまう。
・ひどい痛みが4日以上続く。

月経痛のセルフケア

月経を支配するホルモン分泌のバランスの乱れが、月経痛を悪化させます。ホルモンのバランスを保つためにも、規則正しい生活のリズムを心がけ、昼夜が逆転するような生活は改めましょう。3度の食事をしっかり取り、栄養のバランスにも注意しましょう。冷えが月経痛をひどくするので、足腰を冷やさなさいように。夏でもレッグウォーマーやひざかけを利用して冷えを防ぎましょう。また、月経中もストレッチ体操などの軽い運動で体を動かして、全身の血行を促しましょう。

月経は毎月のことだけに、鎮痛剤だけに頼りたくないと考える人も多いと思います。こういった方にお勧めなのがアロママッサージです。下半身が冷えて骨盤内がうっ血すると月経痛が強くなります。下腹部へのアロママッサージは血行を促し、月経に伴う不快な痛みをやわらげます。

アロママッサージの方法としては、ご自身の手に数滴のオイルをなじませて、お腹と腰をやさしくマッサージしてみましょう。アロマオイルについては、専門店でご相談ください。また、皮膚にアレルギーのある方は、アレルギー反応もあるため控えてください。アロママッサージができなくても、入浴も効果的です。

月経不順

思春期から閉経を迎えるまで、妊娠中以外は約28日に1回、一定の周期で月経があります。正常な月経の周期は、月経の初日から次の月経が始まる前日までが25~49日ですが、この範囲を外れてしまった場合を月経不順と呼びます。

月経不順の種類

原発性無月経(げんぱつせいむげっけい)

18歳を過ぎても初経がみられない。

続発性無月経(ぞくはつせいむげっけい)

これまであった月経が60日から90日以上ない。

頻発月経(ひんぱつげっけい)

月経周期が24日以下で、月に2回も3回も月経が訪れる。

稀発月経(きはつげっけい)

月経周期が46日以上90日未満。無排卵期症が原因の場合が多い。

月経不順の有名な原因の一つとして、1か月に5キ口以上やせる無理なダイエットや激しいスポーツにより、月経をつかさどる視床下部や脳下垂体の機能が低下して起こるものがあります。これ以外にも原因はいろいろと考えられます。

月経不順かな…と思ったら、まずは「生活習慣」の見直しを

月経不順かな?と思ったら、まずは「生活習慣」の見直しをしてみましょう。下記のチェックリストにあてはまるものはありませんか?

・朝食を抜くような、不規則な食事はしていませんか?
・激しい運動はしていませんか?
・無理なダイエットはしていませんか?
・慢性的な疲労(身体的な疲れを抱え込んではいませんか?)
・失恋、人間関係のもつれなど精神的ストレス(精神的に疲れていませんか?)
・転職、引っ越しなど環境の変化は最近ありましたか?

1つでもあてはまるものがあれば、規則正しい生活を意識し、自分に合うストレス解消を探してみましょう。

月経前症候群(PMS)

月経前症候群とは、月経が始まる1週間~3日前に起こる様々な心身の不快な症状を言います。イライラする、眠くなる、集中力がなくなる、怒りっぽくなる、便秘になる、乳房が張って痛む、身体がむくむ、そして月経が始まると症状が治まる。このような症状があって困っていませんか。

月経前症候群(PMS)のチェックリスト

以下のいずれかの症状が月経開始1週間から3日前になると現れ、月経が始まると消えるという人は月経前症候群(PMS)と言えます。あてはまる症状があるかどうかチェックしてみましょう。

体にあらわれる症状

・乳房が張る、 痛くなる
・顔や手足がむくむ
・疲れやすい、眠い
・頭痛、肩こり
・下腹部が張る、痛い
・ニキビや吹き出物ができる
・トイレが近くなる
・便秘になる

心にあらわれる症状

・イライラする
・集中力がなくなる
・興奮しやすくなる
・食欲が抑えられない
・落ち込む
・無気力になる

月経前症候群(PMS)は、黄体ホルモンや自律神経が影響していると記述されることもありますが、まだ原因ははっきりとしません。

月経前症候群(PMS)の対処法

月経前症候群(PMS)の対処法としては、以下の3つの方法が挙げられます。

①自分自身の体の状態を知る
②生活を見直す
③必要に応じて婦人科に受診をする

体の状態については、症状やタイミングを記録しておくことで、家事や仕事について無理のないように工夫をしていきましょう。また、生活面については、適度な運動や睡眠、ストレスの回避(自分で合ったストレスを上手に付き合う方法)について見直していきましょう。最後に、自分自身で解決できない場合には、医師による治療が必要になることもあります。具体的には低用量ピルや、漢方薬が用いられます。副作用については、よく医師に相談をしてください。

まとめ

今回は、月経(生理)トラブルの原因とセルフケアについて解説しました。月経(生理)については個々に症状が異なります。ご自身の月経(生理)について理解を深めて上手に付き合い、前向きに生活をしたいものですね。今回の記事が皆さまのお役に立てれば幸いです。

この記事の著者

岩崎有子(いわさき ゆうこ)

看護師・保健師・公認心理師
ココロト オンラインカウンセラー
ココロト メールカウンセラー

群馬県立福祉大学校保健学科および放送大学教養学部卒業。武蔵野大学大学院修士課程 人間学専攻在学中。旧与野市役所、埼玉県大宮保健所勤務を経て、さいたま市の保健師として18年勤務。現在は看護師添削指導員、地域活動支援センター、就労移行支援事業所、就労継続支援、放課後等デイサービス、NPO活動など様々なフィールドで活動を行う。専門は障害福祉、小児精神保健、障害者の性。