双極性障害とは何か【分かりやすく解説】

皆さん、こんにちは。臨床心理士/公認心理師の岩崎ひろみです。

本稿では、精神疾患の一つである双極性障害を取り上げていきたいと思います。

双極性障害は、うつ病ほどは広く知られてはいませんが、女性ボーカルグループ・Little Glee Monsterの芹奈さんや泰葉さん、イケメン韓流スターのチャン・グンソクさんなど、障害を公表している有名人の方もいますので、聞いたことがあるという方もいらっしゃるかと思います。

また、読者の中には、双極性障害と診断された方や、ご家族が双極性障害と診断された方、あるいは双極性障害かも知れないと心配していらっしゃる方もいるかもしれません。

そこで、今回は双極性障害とはどんな病気なのか、そして、どのようにつきあっていけばよいか見ていきたいと思います。

双極性障害とは

双極性障害は、気分が高まる「躁(そう)状態」と気分が落ち込む「うつ状態」を繰り返す病気です。

躁状態やうつ状態になると、下記のような症状が現れます。

躁症状

  • エネルギーにあふれ、気分が高揚する
  • あまり眠らなくても元気
  • 「自分は何でもできる」という気になる
  • 多弁(おしゃべり)になる
  • アイディアが次々に浮かんでくる
  • イライラして、怒りっぽくなる
  • 注意が散漫になる
  • じっとしていられない
  • 浪費(高額な商品を購入するなど)
  • 性的逸脱

うつ症状

  • 気分が落ち込む
  • 寝てばかりいる、あるいは寝たいのに眠れない
  • 食欲がなくなる
  • やる気が起きない
  • 何事も楽しめない
  • 疲れやすい
  • 決断力がなくなる
  • 集中力が低下する
  • 悲観的な考えばかりが浮かんでくる
  • 自分には生きる価値がないと自分を責めてしまう
  • 死にたくなる

双極性障害は、うつ状態があるという点ではうつ病と重なる部分がありますが、現在の診断基準ではうつ病とは明確に区別され、全く別の病気と捉えられています。

しかし、双極性障害の方は、うつ状態で病院にかかることが多く、最初はうつ病と診断されることもあります。この理由としては、約2/3の方が、うつの症状から始まるとされていることが挙げられます。また、躁状態の時は、周りの人から見ると「いつもと様子がおかしいな」と異変を感じることもありますが、その一方、本人は自覚がなく、自分の思考や行動を正当であると思い込んでいることも多いためと考えられます。

気分の波

双極性障害は気分が高揚する躁状態の程度により、Ⅰ型とⅡ型に分類されます。

Ⅰ型

Ⅰ型の特徴は、躁状態もうつ状態もはっきりと表れる点です。顕著な躁状態になると、他人を攻撃したり口論になったり、浪費や無謀な計画、逸脱した性行動を取るなど、自分自身に不利益を生じさせてしまうリスクがあります。

Ⅱ型

Ⅱ型の場合、I型ほど極端な躁状態は現れず、「軽躁状態」と呼ばれる心身ともに活発な状態になります。軽躁状態は創造的で落ち着いた活動も可能ですが、病気が軽いということではありません。Ⅱ型はⅠ型に比べてコントロールしにくく、うつ状態を再発しやすいともいわれています。

状態のサイクルの変化には個人差があり、再発のたびに頻度が短くなるといわれています。

原因

双極性障害の原因は明らかにされていませんが、近年の研究では脳内の情報伝達の乱れが関係していると考えられています。また、双極性障害は同じ家系に発病する確率が高く、遺伝的な要因もあると考えられています。そのため、遺伝的要因と、ストレスなど病気のきっかけとなる要因の組み合わせにより発症するという考え方もありますが、未解明の部分が多くあります。なお、双極性障害を引き起こす特定の遺伝子は見つかっていません。

治療と対処法

①治療は薬物治療が中心

治療は薬物治療が中心です。双極性障害は再発しやすい病気なので、効果のあった薬はそのまま継続することが再発予防につながります。症状が良くなったからといって勝手に薬を止めてしまうと再発し、どんどん状態が悪くなる場合があります。医師の指示にしっかりと従うことが大切です。

②疾病についての理解を深める

また、双極性障害は病気についての理解が非常に重要と言われています。

先にもお伝えしましたが、本人は躁状態を病気だと認識できないことも多く、うつ病と診断されることも多いのですが、双極性障害とうつ病では治療方法が異なります。双極性障害のうつ状態であることに気づかれないまま抗うつ薬で治療を続けていると、うつ状態が治らないばかりか、急に躁転(躁状態が出現)する恐れもあるため、診察の際にはこれまでの経過をしっかりと伝えることが大切です。家族や周りの方にも意見を聞いてみると、躁状態の経過があったことに気づくこともあります。

①自分の病気を自覚する
②治療法を守ることの必要性を理解する
③再発の早期兆候を知り、生活スタイルを規則正しくする

こうしたことの重要性を理解した人たちは、再発までの期間が延びることが知られています。

双極性障害は、薬を飲まなくなったり、生活リズムが乱れたり、ストレスの多い状況にさらされると再発しやすいことが知られています。薬をしっかり飲むこと、生活リズムを整えること、ストレスになる出来事が重ならないようにすること(就職と同時に引っ越しなど)が大切です。またこれまでの病歴を振り返り、自身の再発の兆候をつかみ、早目に対処できるようにしていくことも大切です。

③家族の協力

そして、ご家族の協力も重要です。本人と一緒に、病気についての知識を深めるとよいと言われています。

躁状態になると症状が改善したと思い、薬を飲まなくなることもあります。その場合、服薬の管理をサポートする等の協力が必要になることがあります。また、浪費などの問題行動について知っておくことや、どんな時に症状が出やすいか、どのような再発の兆候があるかを予め理解しておくことで、本人が気づかなくても、周りからの指摘で早期対処ができることもあります。

まとめ

冒頭でも触れたLittle Glee Monsterの芹奈さんは、双極性障害とADHD(注意欠如・多動症)の診断を受けたそうですが、双極性障害とADHDは特徴が似ていると言われています。そのため、誤診されやすいこともありますが、ADHDの合併症として双極性障害を引き起こしている場合もあります。

双極性障害は遺伝的要因に加え、性格や精神的・身体的ストレスといった様々な要因が混ざり合い、急激に社会適応能力が低下するのに対し、ADHDは先天的な脳の機能障害の一つで、認知機能に偏りが起こるという違いがあります。

双極性障害とADHDでは治療法が異なりますので、医師の下で正しい診断を受けることが重要です。気になる症状がある方は、精神科や心療内科で専門医に診てもらいましょう。

この記事の著者

岩崎ひろみ

臨床心理士/公認心理師。カウンセリングルームでの心理カウンセリング、電話相談、福祉施設での面談業務などを経験してきました。臨床では主に成人の方を対象としてきましたが、現在0歳児の育児に奮闘しながら、子どもの発達などについても学んでいます。