①【転職のタイミング】今の仕事に疑問を感じたとき、あなたならどうする 「わたしの幸せをつくる転職活動」

皆さん、はじめまして。公認心理師/臨床心理士/キャリアコンサルタントの山本智代です。

これから数回にわたり「私の幸せをつくる転職活動の進め方」というテーマで、効果的な転職活動の進め方や、転職にまつわる悩みについて連載していきます。第1回のテーマは、実際の相談の中でも特に多い「転職のタイミング」について取り上げます。

転職を考えたとき

仕事をしている中で、目の前の仕事がうまくいかなかったり、同僚や上司の理解を得られなかったり、孤独を感じてしまった経験がある方は少なくないと思います。

このようなことが続いたとき、ふと頭に「転職」という選択肢が浮かぶかもしれません。確かに、あまりに耐え難い苦痛を感じたり、それが心身の健康にかかわるようなことだったりすると、「転職」という手段でその場を離れる必要もあるでしょう。

一方で、私が担当したカウンセリングの場面では、「漠然とした不安」や「ただ辛くて辞めた」と自己完結して転職した結果、「次をどうしたらよいのか分からず、困っている」とご相談に来られる方も多くいらっしゃいます。

いずれにしても、一時的な感情や状況だけで性急に退職するかどうかを決めるのではなく、現状をしっかりと整理した上で決めることが重要です。そして、その際に活用できるのがキャリア・プランニング・プロセスです。

キャリア・プランニング・プロセス

キャリア・プランニング・プロセスとは、キャリア形成を考える際の論理的な手順のモデルです。自分自身のキャリアを考える際の指針となるプロセスを示したものとして、キャリアコンサルティングの場面でも活用されています。言わば、キャリアを考える際の1つの地図の役割を果たしてくれるものです。

転職を考えるとき、この「キャリア・プランニング・プロセス」のモデルが役に立ちます。

「キャリア・プランニング・プロセス」には、7つのステップがあると言われています。各ステップを転職に応用してみていきます。

キャリア・プランニング・プロセス

  1. 意思決定の必要性の自覚・・・転職の必要性を判断
  2. 自己の再評価・・・職業経験の振り返り、興味・能力・価値観の見直し
  3. 職業・仕事の特定・・・職業・仕事の絞り込み
  4. 選択肢に関する情報収集・・・絞り込んだ職業・仕事の情報を様々な手法で集める
  5. 仮決定・・・ステップ3で絞り込んだ職業・仕事から1つの選択肢を選ぶ
  6. 教育・訓練・・・必要があれば、資格取得やスキル向上の教育・訓練を受ける
  7. 転職・異動・・・ステップ5で選択した職業・仕事への応募、応募書類の作成、面接

今回は、「キャリア・プランニング・プロセス」の7つのステップのうち、第1ステップとなる「意思決定の必要性の自覚」についてお伝えします。

あなたの頭に「転職」が浮かんだ時、まずは、この最初のステップで、「転職の必要性があるかどうか」を判断します。ここで転職の判断をした場合は、その後のステップ2~7の手順を進んでいくことになります。ここでどう判断するかは、今後のステップを進める大切な指標となるでしょう。

意思決定の必要性の自覚

最初のステップは、「そもそも転職の必要性があるかどうか」を判断することです。

転職の必要性があるかどうかを考える際にお勧めなのが、現状の「引っ掛かりポイント」を「変えられるもの」と「変えられないもの」に分けることです。「変えられるもの」については、行動し、工夫・改善に努めます。一方、それが「変えられないもの」だった場合は、転職が1つの選択肢となります。

では、どのように「変えられるもの」と「変えられないもの」をわけるのか、①から④の流れで具体的にみていきましょう。

「引っ掛かりポイント」を書き出す

まず、今のお仕事の中で感じている「引っ掛かりポイント」を見つけましょう。紙やスマホのメモ欄に箇条書きで記入します。あまり深く考えずに、思いつくままに書いていきましょう。

STEP
1

「引っ掛かり」を変えることができるかチェックする

ある程度引っ掛かりポイントが出たら、それら1つ1つについて、どれくらい変えることができるか(改善の見込みがあるか)」をチェックします。見極めのポイントは、その引っ掛かっているポイントが自分要因なのか、環境要因なのかをチェックすることです。

一般的には、下記の例1のように自分要因の場合、変えられる可能性が高く、例2のように環境要因の場合、変えられる可能性は低いと考えます。

例1:自分なりに頑張っているけれど、なぜか周囲とうまくいかずに仕事がスムーズにいかない
 →「自分要因」の可能性が考えられます。

例2:目標を持って成果も出しているのに、キャリアアップや対価が見込めず、モチベーションが上がらない
 →「環境要因」の可能性が考えられます。

STEP
2

変えられるものは、変えるための行動をする

変えられる可能性が「高い」「自分要因」に分類した項目については、まず「変える」ための「行動」をしてみましょう。

例1:自分なりに頑張っているのに、なぜか周囲とうまくいかずに仕事がスムーズにいかない(自分要因)
→周囲への普段の接し方や伝え方を工夫、見直しができるかもしれません。

例2:自分なりに目標をもって成果も出しているのに、キャリアアップや対価が見込めず、モチベーションが上がらない(環境要因)
→制度や組織の仕組みの問題は組織への働きかけが必要となるので、変えることが難しい場合があります。そのような場合、周囲への働きかけで改善ができるか吟味してみましょう。例えば、周囲との関係性やパワハラ等は、直接他者を変えることは難しいですが、専任担当や信頼のおける上司に相談することで、状況が改善することもあります。

STEP
3

転職の必要性があるかどうかを判断する

上述の1~3を行った上で、転職の必要性があるかどうかを判断します。

引っ掛かっていたポイントを自分で変えられるのであれば、行動を起こすことで転職せずに現職に適応することができるかもしれません。しかし、現状を変えられない場合や、引っ掛かりポイントを変えられなかった場合、転職も一つの選択肢となってくるでしょう。また、転職するか・しないかの2者択一ではなく、ひとまず保留にすることもできます。

STEP
4

現職に留まるのであれ、転職するのであれ、いずれにしても現状を整理し、改善できるものはないか、しっかりと吟味してから決定をするという意志決定のプロセスが、転職には必要となります。

このようなプロセスを踏むことで、「この転職は一時的な気分や感情ではなく、改善できるところまでは自ら行動した結果だ」、「単なる現状からの回避ではなく、最善策を転職という形で選択できた」という自信になります。そして、その後の就職活動においても、転職理由をポジティブにアピールできます。目の前の出来事に対して、自ら向き合い、対策を立てて実行できる人物であるとの評価に繋がるからです。

転職を決断した以降のプロセスについては、次回以降の記事で取り上げる予定です。

まとめ

人は生涯にわたり様々な経験を通し成長します。入社当初に感じていた自身の価値感や能力が変化することもありますし、周囲の環境や役割の変化により、以前適応できていても、今後適応できなくなる場合もあります。今の職場で「引っ掛かり」が出てきたとき、それは自分にとって「変えられるものか」「変えられないものか」一度立ち止まって整理する時間と勇気が必要かもしれません。  

一人で整理したり考えたりするのが難しい場合、専門のカウンセラーに相談するのも有効です。ココロトでも有料のカウンセリングを受け付けています。ぜひご活用下さい。

著者プロフィール

山本 智代(やまもと ちよ)

公認心理師・臨床心理士・キャリアコンサルタント。教育系大学を卒業後、人材総合コンサルタント企業での人材育成・派遣事業、教育関連企業での進路セミナーの企画営業に携わった後、官公庁、ハローワークの採用・キャリア支援の勤務を経て心理系大学院へ進学。卒業後は、心理とキャリアに関する専門家として、行政機関での乳児・幼児・児童の発達・教育相談、ハローワークでのキャリア・心理カウンセリング、スクールカウンセラー等に従事。さらに、女性のキャリア、仕事と子育ての両立などをテーマにしたキャリアカウンセリングやセミナーに携わっている。