②【自己の再評価】転職を決めたら、まずやること「わたしの幸せをつくる転職活動」

皆さん、こんにちは。公認心理師/臨床心理士/キャリアコンサルタントの山本智代です。

「私の幸せをつくる転職活動の進め方」というテーマで、効果的な転職活動の進め方や転職にまつわる悩みについて連載しています。第2回となる本稿では、転職を決めたらまず最初にやるべきこと「自己の再評価」についてお伝えします。

前回までの復習

転職を考えたとき、一時的な感情や状況だけで性急に退職するかどうかを決めるのではなく、現状をしっかりと整理した上で決断ことが重要です。その際に有効なのが、下記のキャリア・プランニング・プロセスと呼ばれる7つのステップに沿って転職を考えることです。

キャリア・プランニング・プロセス

  1. 意思決定の必要性の自覚・・・転職の必要性を判断
  2. 自己の再評価・・・職業経験の振り返り、興味・能力・価値観の見直し
  3. 職業・仕事の特定・・・職業・仕事の絞り込み
  4. 選択肢に関する情報収集・・・絞り込んだ職業・仕事の情報を様々な手法で集める
  5. 仮決定・・・ステップ3で絞り込んだ職業・仕事から1つの選択肢を選ぶ
  6. 教育・訓練・・・必要があれば、資格取得やスキル向上の教育・訓練を受ける
  7. 転職・異動・・・ステップ5で選択した職業・仕事への応募、応募書類の作成、面接

最初のステップである「意思決定の必要性の自覚」は、そもそも転職の必要性があるかどうかを判断することです。具体的には、現状の職場(仕事)で引っ掛かっているポイントを「変えられるもの」と「変えられないもの」に分け、「変えられるもの」については工夫・改善に努め、「変えられないもの」だった場合は、転職が1つの選択肢になるというものです。

詳しく知りたい方は前回の記事をご覧ください。

仕事/就職・転職
①【転職のタイミング】今の仕事に疑問を感じたとき、あなたならどうする 「わたしの幸せをつくる転職活動」

方向性が定まらないまま転職活動を進めると…

キャリア・プランニング・プロセスの手順に従い、ステップ1「意思決定の必要性の自覚」で転職を決めたものの、方向性が不明確なまま転職活動を始める方は少なくありません。

例えば、「今回接客でうまくいかなかったから、次は事務かな…」など、「なんとなく」で方向性を決め、やみくもに求人検索を始めるといったケースです。もちろん、積極的に行動することはよいことですし、そうすることで新しい方向性に気付く場合もあります。

しかし、転職活動の軸が定まらないまま応募を続けた結果、応募書類や面接で行き詰ったり、採用に至ってもモヤモヤが続いたり…そして不満足感が高まり離転職を繰り返すというケースも少なくありません。

また、方向性は決まっていないけれど、条件(企業規模、給与水準など)は明確に絞り込んで求人を探す方もいます。

しかし、転職活動時にいくら好条件でも、今後その条件が継続するとは限りません。環境や条件面は、社会経済状況で変化する可能性が高いからです。自身ではコントロールできない条件のみを軸にすると、その条件が変化した場合、自身を支える軸はもろくなり、不満が高まることもあるでしょう。

一方で、周囲がどのように変化しようとも変わらないのは、自分の中にあるリソース(自分の「働く」を支える要素)です。だからこそ、条件のみでなく自身の中にあるリソースをセットでみて、転職活動の軸を定めることがとても大切です。

職業経験をふり返り、リソースを探す

自分の中にあるリソースを探す作業をするのが、キャリア・プランニング・プロセスのステップ2「自己の再評価」です。具体的には、これまでの職業経験を1つずつふり返ることで、自身の中にあるリソースを探していきます。具体的には、「興味」「能力」「価値観」という観点から考えるとよいでしょう。

キャリア・プランニング・プロセス(再掲)

  1. 意思決定の必要性の自覚・・・転職の必要性を判断
  2. 自己の再評価・・・職業経験の振り返り、興味・能力・価値観の見直し
  3. 職業・仕事の特定・・・職業・仕事の絞り込み
  4. 選択肢に関する情報収集・・・絞り込んだ職業・仕事の情報を様々な手法で集める
  5. 仮決定・・・ステップ3で絞り込んだ職業・仕事から1つの選択肢を選ぶ
  6. 教育・訓練・・・必要があれば、資格取得やスキル向上の教育・訓練を受ける
  7. 転職・異動・・・ステップ5で選択した職業・仕事への応募、応募書類の作成、面接

このステップは、転職を決めたらまず最初にやるとよいでしょう。ここでしっかりと自分のリソースを整理することが、その後の職業・仕事の絞り込みや応募書類・面接対策に繋がります。キャリアカウンセリングの場面でも、特にじっくりと取り組む肝の部分となります。

職業経験のふり返りに有効な視点は、「興味(好きなこと)」「能力(スキルをもっていること)」「価値観(重要だと信じていること)」の3要素です。

キャリア理論で著名なジョン・L・ホランドとドナルド・E・スーパーは、「仕事の満足度を高めるために必要な要素」としてこの3つを挙げています。個人にとって満足のいくキャリアの意思決定をするためには、この3要素を明確にする必要があると言われています。

そこで、自分の「興味」「能力」「価値観」を明確にするための職業経験のふり返りとして、シンプルでお勧めの方法をご紹介したいと思います。(学齢期まで遡って行う方法もありますが、今回は職業経験に絞っています。)

興味・能力・価値観を明確にする職業経験のふり返り方

それでは、著者がお勧めする職業経験のふり返り方をご説明します。

これまで経験した仕事内容を箇条書きにする

各職歴で経験した「仕事内容」を箇条書きでピックアップします。

STEP
1

これまでの仕事の興味・能力・価値観を評価

各仕事内容に対し、「興味(好きなこと)」「能力(スキルをもっていること)」「価値観(重要だと信じていること)」を3段階【◎とてもある/〇ある/△あまりない】のいずれかで記入しましょう。主観的な判断で構いません。

能力については、仕事に必要な「スキルや知識」だけではなく、「実際に行動に移すことができる力」も含みます。意識や心掛けだけではなく、実際どのような「行動」ができて成果を上げることができたかなど、「行動ベース」で能力面を捉えるとわかりやすいでしょう。

STEP
2

なぜその評価をしたか掘り下げる

なぜその評価をしたか、各仕事内容の「興味・能力・価値観」を掘り下げてみていきましょう。

興味(好きなこと)
「その仕事内容のどの部分に興味をもっているのだろう?」「どんなときにワクワクしてきただろう?」「何に喜びを感じていただろう?」などを考えてみるとよいでしょう。興味が意識化されていない場合でも、上述のような点を掘り下げることで、浮上する場合があります。

能力(スキルをもっていること)
その仕事で「どのような成果が要求されるか」を考え、それに対し自分は「どのような状況や立場」で、「目標に対し、どのように行動し、どのような成果を挙げたか」を振り返ることです。事務職など、成果を具体的に表すことが難しい仕事の場合は、「職場内外の人とどのように協力して組織に貢献したか」「どのように工夫・見直しをして業務改善ができたか」などについて、整理してみるとよいでしょう。

価値観(重要だと信じていること)
「何に(誰に)どのように貢献したいか、役立っていたいか」など、仕事において「自分が大事にしたい考えや信念」を指します。重要なことは、世間一般にとってどうか、ではなく、「自分にとって大事にしたいかどうか」の視点です。

STEP
3

医療事務員Dさんの例

ここで実際に、Cクリニックの医療事務員として働いてきたDさんを例に見ていきましょう。

以下は、Dさんがこれまでに経験した仕事内容と、興味・能力・価値観を自己評価したものです(Step1・2)。

次に、それぞれの仕事内容について、なぜその評価をしたのか深堀していきます(Step3)。

興味
・受付業務◎:家族が入院した際の受付対応に感銘を受け、患者さんとコミュニケーションを取りながら、間接的に治療に貢献できる業務に魅力を感じる。
・レセコン業務△:数値を扱うことは苦手ではないが、人への対応ほど興味がわかない。
・クラーク業務△:重要な仕事だとは思うが、得意業務でないため、さほど興味がわかない。

能力
・受付業務◎:社内外の人と良好な関係を築いてきたことで、スムーズな業務遂行とクリニックのイメージ向上に貢献した。
・レセコン業務〇:興味はさほどないが、数値を丁寧迅速に処理できることで、正確な請求業務に貢献した。
・クラーク業務△:同時多発する業務をしながら、多数の人とやりとりをすることは不得意。

価値観
・受付業務◎:間接的に治療に貢献できるとともに、コミュニケーションを通して患者さんに心理的安心を提供できる。
・レセコン業務〇:迅速で正確な処理業務ができることに達成感を感じる。
・クラーク業務〇:患者と医師・看護師が信頼関係を築き、適切な医療が施されるためのサポートができることに、価値を感じる。

最後に、各職歴でチェックした項目「◎〇」の共通点をみていきましょう

Dさんの場合、患者家族としての経験からの興味に基づき、数値を正確に扱えて良好なコミュニケーションができる能力を使いながら、間接的に治療に貢献できるという点に価値を置きながら医療事務員として働くことは、高い満足度が得られる仕事のひとつと言えるかもしれません。

一方、さまざまな業務が同時多発する場面や多数の人と連携することに不得意さがあるので、ある程度分業体制が整っていて、クラーク業務のないクリニックの方が力を発揮しやすいかもしれません。このように、職歴を「興味」「能力」「価値観」の3要素で振り返ると、自分のリソース(資源)が明確になります。

また、留意したいことは、「あくまで現時点での主観的な評価」という点です。自己評価が△と思っていても、第三者から見れば○になる場合もあります。また、現在の職場では△かもしれませんが、別の環境ではそれが○になることもあります。さらに言えば、たまたま今までの職場では活かしきれていなかった自分の能力や興味があるかもしれませんし、今後伸ばしていける要素が隠れているかもしれません。

例えば、医療事務員では接客経験を問われる場合もありますが、接客未経験でも、セミナー参加や資格取得でこれから習得していくことが可能です。他者との連携が苦手な場合でも、相手に伝えるスキルを身に付ければ、改善できる部分が増えるかもしれません。カウンセラーなど第三者の視点を交えて、自身を再評価することも有効でしょう。

まとめ

私たち一人ひとりの中に、その個人を支えてきたリソース(資源)が存在します。リソース(資源)は、あなたの強みになります。その強みをどのような環境で、どのように役立てていきたいかが、次のステップ3「職業・仕事の特定」になります。

ご自身の可能性に限界を決めず、すでにあなたの中にあるリソース(資源)を大切に育てていきましょう。そして、自分自身がそれらを存分に使い、多様に増やしていける存在であることに喜び、可能性を感じていたいですね。

著者プロフィール

山本 智代(やまもと ちよ)

公認心理師・臨床心理士・キャリアコンサルタント
ココロト オンラインカウンセラー

教育系大学を卒業後、人材総合コンサルタント企業での人材育成・派遣事業、教育関連企業での進路セミナーの企画営業に携わった後、官公庁、ハローワークの採用・キャリア支援の勤務を経て心理系大学院へ進学。卒業後は、心理とキャリアに関する専門家として、行政機関での乳児・幼児・児童の発達・教育相談、ハローワークでのキャリア・心理カウンセリング、スクールカウンセラー等に従事。さらに、女性のキャリア、仕事と子育ての両立などをテーマにしたキャリアカウンセリングやセミナーに携わっている。