性交痛の種類と対策-対処法のレパートリーを増やそう!

初めまして。臨床心理士の西田めぐみと申します。本稿から数回にわたり、性のお悩みをテーマにした連載を執筆します。

著者は普段、大学の学生相談室でカウンセリングを行いながら、SNSで性のお悩みに関しての発信をしています。性に関しての発信は、当初は「見てくれる人はいるのだろうか」と思っていた部分もありましたが、発信し始めて3ヶ月。毎日のようにDMでご相談を頂いたり(現在はDM相談はストップしています)、たくさんの方にフォローして頂いている現状を見ると、なかなかオープンにできないとはいえ、性別や年齢に限らずたくさんの方が性について悩み、誰かに相談したい、話を聞いてほしいという思いを持っているのだなと改めて実感しています。

本連載を通して、たくさんの方に性のことについて知っていただき、困みごとの解決につながればと思います。

性交痛とは

第1回目のテーマは、女性にとって実は身近な悩みの1つ、「性交痛」です。「性交痛」とは、性交時に感じる痛みの総称です。米国産科婦人科学会の調査では、性交で痛みを感じることは珍しいことではなく、女性の約75パーセントは性交痛の経験があるそうです。

実際に周囲の声や相談を聞いていても、「初めては痛かった」「今も痛みは感じている」という女性はとても多いです。その一方で、「痛みがあるのが当たり前」「ガマンすればいい」と思っている女性も多いように感じます。「人には言いにくい。だから痛みを解消するのではなく我慢する。」そのように限られた選択肢のなかでは、性行為や男性への嫌悪感を助長してしまう恐れもあります。

性交痛はその原因にもよりますが、ちょっとした工夫や自分の気持ちを見つめ直すことをキッカケに痛みを緩和できるケースもあります。まずは性交痛にはどのようなものがあるのか、どのような対処法があるのかを知って、性交痛への対処法の選択肢を増やしましょう。

性交痛の要因

性交痛の要因は主に4つに分けられます。

①女性の身体的なもの

女性の体質や何らかの疾患、産後など状態によるもの

②男性が関係するもの

男性の性器のサイズ(太さ、長さ)や、行為中の言動によるもの

③心理的なもの

疾患や傷はないが痛みを感じたり、実際の疾患や傷の状態以上の痛みや恐怖、嫌悪感を感じる場合

④身体的原因と心理的原因が影響しあうもの

「また痛かったらどうしよう」など予期不安による女性の潤い不足や、痛みの増大。

性交痛の対処法レパートリーを知ろう

以上のように、性交痛の原因には様々なものがあります。「こんなにあったら、何から対応していけばいいのかわからない…」そんな方はまず以下のことから試してみてもらえればと思います。

普段からやっておくこと

(1)10代でも、生理が始まったらかかりつけの婦人科を探しておく

性の悩みは話しにくいもの。だからこそ困った時にいそいで受診先を探すのではなく、あらかじめHPを確認したり周囲の評判などを聞いて、自分がここなら話せそうだなと思える婦人科にかかっておくと、いざというときも相談しやすくなります。

(2)20代以上の方は、年に1回婦人科検診を受診する/10代の方でも、性交経験がある人は婦人科検診の受診を!

性交痛は婦人科系疾患を見つけるバロメーターの1つでもあります。定期的な婦人科検診は早期発見にもつながりますので、年に一度は受診するようにしましょう。10代の方でも、性交経験のある人は検診を受けましょう。なぜなら、子宮頸がんの原因と考えられているHPV(ヒトパピローマウィルス)の感染源は性交渉だからです。定期的な検診で早期発見ができれば治療効果も期待できますので、ぜひ検診は受けて頂きたいです。

(3)パートナーに自分の気持ちを伝えられる関係性を作る

これに関しては一長一短でできることではありませんが、ぜひ日々意識してほしいことの1つです。相手の気持ちを尊重しながら、自分の気持ちを伝えることができているか。もしそれが難しいのならば相手との関係を続けていけるか一度考える、あるいはカウンセリングを利用して自分の気持ちと向き合うこともできます。

行為中に工夫できること

(1)コンドームの素材を変える

意外と多いのが、コンドームの素材によるアレルギー。特にラテックスアレルギーによるかゆみや痛み、またアレルギーでなくてもラテックス特有の摩擦が痛みにつながることもあります。男性と違い、女性は性器を視覚的に確認することが難しく、違和感があってもラテックスアレルギーだと気づきにくいこともあります。

行為後になんとなく性器に違和感があるという方は、一度ポリウレタン製やイソプレンラバー性などの別の素材のコンドームを試していただいて、自分に合ったコンドーム選びにチャレンジしてみて下さいね。

※患部に違和感が残っている場合は、それが治まるまで行為自体を控えて下さい。

(2)潤滑ゼリーを使用する

潤滑ゼリーとは、粘性と潤滑性をもった水溶液で、摩擦を軽減させる効果があるジェルのことです。最近は一見潤滑ゼリーとはわからないようなおしゃれなものや個包装のものがあるなど、とても購入しやすく持ち歩きのしやすいものが多いです。事前に注入しておけるタイプやあとから塗布するものなど、タイプも様々。ただ1つ注意してほしいのですが、ポリアクリル酸ナトリウムを含むローションには吸水作用があるため、膣内で使用するとカンジダや炎症を起こす原因となります(ローションは主に体をマッサージするときに使います)。ですので、注意事項をよく読んで、膣内に使ってもいいものかどうかをしっかり確認してください。

(3)浅く挿入する体位で行う

女性が上になって挿入度合を調整できる体位や、女性が下になる場合でも足を閉じた状態で奥まで入らないような体位でされると、痛みが緩和される場合がありますし、女性側も安心度が高くなります。ただ無理は禁物ですので、様子を見ながら行ってください。

(4)挿入が全てではないと認知する

デズモント・モリス氏が男女の親密度を12段階で示した「親密度の12段階」と呼ばれるものがあります。この親密度の12段階は、長続きするカップルとすぐ別れるカップルの間の相違点を見出すためのものだそうですが、安心安全の観点で性行為を行う上での指標にもなるのではないかと思います。

親密度の12段階(デズモント・モリス)

  1. 目をカラダに
  2. 目を目に
  3. 声を声に
  4. 手を手に
  5. 腕を肩に
  6. 腕を腰に
  1. 口を口に
  2. 手を頭に
  3. 手をカラダに
  4. 口を胸に
  5. 手を生殖器に
  6. 性交

特に女性は安心を感じられないと身体が委縮してしまったり潤いにくくなって、結果的に痛みが増大することがあります。性行為は2人が安心した状態でできるところまででいい。挿入に至らなくても、2人がリラックスして触れ合うことはセックスとして十分成り立っています。矛盾しているかもしれませんが、快適に挿入するために挿入にこだわりすぎないという考え方も大切です。とはいえ、いきなりパートナーと共有するのは難しいという方にはカウンセリングを利用して頂いて、気持ちを整理しながらお話したりもします。

まとめ

性交痛の種類と対策についてお伝えしましたが、いかがでしたでしょうか。今後は1つ1つのパターンについてもう少し詳しくお話できたらと思います。対処法を増やして、快適な性生活を送る参考にしていただけたら幸いです。

この記事の著者

西田めぐみ

臨床心理士/マインドフルネス認定講師。20代の頃リラクゼーションセラピストとしてマッサージをしながらお客さまのお悩みを聞くうちに、

こころと身体はつながっていることを実感しました。それをキッカケに心理のことを学びたいと思い、臨床心理学の世界に。現在は大学の学生相談室で心理カウンセリングに携わりながら、性のお悩みに関してのSNS発信やオンライン相談を行っています。こころと身体、両側面からのウェルビーイングを大切にしています。