③発達障害の特性と共存するためのライフハック【当事者による大人の発達障害講座】

皆さま、こんにちは。公認心理師の田中竣也です。

当事者による大人の発達障害講座も3回目となりました。第1回、第2回のコラムでは、それぞれ、私の経験を踏まえつつ、自閉スペクトラム症(以下、ASD)、注意欠陥多動症(以下、ADHD)の特性に関してお伝えしてきました。

発達障害
①自閉スペクトラム症の特徴とは【当事者による大人の発達障害講座】
発達障害
②注意欠陥多動症の特徴とは【当事者による大人の発達障害講座】

今回は、私が自分自身の特徴を理解した上で、どのように工夫をしながら発達障害の特性と向き合い、共存しながら生活しているかについてお伝え致します。

発達障害の特性ゆえに失敗し続けてきた過去

発達障害やその傾向の強い人たちは、会社や学校などでの社会生活において様々な失敗経験を積み重ねて、自己肯定感が低い場合も少なくありません。

そう言う私も、その一人です。

「自分はなんでこんなこともできないんだろう…」
と思い悩んできました。

幼少期や思春期には忘れ物や失くし物が多く、よく叱られていましたし、人と上手にコミュニケーションを取ることができずに、嫌われたり孤立したりしていたことも多かったように思います。

このような出来事は、私が成人した後も続きました。中でも印象に残っている出来事が2つあります。

①大学院時代の病院実習
実習で必要なものを忘れてしまったり、実習先の人たちに対して悪気なく戸惑わせるようなことを言ってしまったりといった失敗を多くしてしまいました。そのため、実習先から大変に厳しい評価を頂いたばかりか、大学院にクレームが来たこともありました。

②初めて勤めた病院
ここでも、不注意なミスを連発したり、患者さんとのコミュニケーションが上手く取れなかったりと、様々な失敗を繰り返してしまいました。仕事を上手くこなせない自分への不甲斐なさ周りの人たちへの申し訳なさのために、適応障害を起こして半年ほどで退職してしまいました。

どちらも、発達障害の特性ゆえに失敗を繰り返し、自己肯定感を大きく下げた出来事でした。

「当たり前のことが当たり前にできない」

そのことに直面させられてしまい、その当時は自分自身に嫌気が差していました。

発達障害の特性と共存するためのライフハック

このように、発達障害の特性のために多くの失敗をしてきましたが、現在では1人の社会人、1人の公認心理師として、どうにか社会に適応して生きています。

私が社会に適応できたコツは、自分が失敗しやすい場面を理解したことです。そして、そのような失敗しやすい場面に工夫を加えることで、失敗を減らし、自分の特性と共存することができました。

そこで今回の記事では、私が実生活において行っている工夫 – ライフハック – をいくつかお伝えしたいと思います。

①予定忘れを減らすためのライフハック

社会人になると、職員会議や研修、打ち合わせ等に参加しなければならないことが多々あると思います。

そのためには、当然それらの予定を把握しておかなければなりませんが、私の場合はADHD傾向のためか、予定をすっかり忘れてすっぽかしてしまったことが何度かありました。

そのため、叱られたり、信用を失ったりすることもしばしば。予定を忘れないために手帳を買っても、その手帳を見ること自体を忘れて予定をすっぽかしてしまう始末。

では、手帳を見る習慣をつけるためには、どうすればよいか…?

私は手帳を見る動機付けを高める(手帳を見たくなる方法を考える)方法をいろいろと探した結果、手帳に好きなアイドルの写真を入れることにしました

すると、好きなアイドルに疑似的に会っている気分になりたいがために、手帳を開くクセがつきました。

現在は朝の出勤前と夜寝る前に手帳を見ることで、当日の予定や、いつもより早い出勤の日を確認することができるため、すっぽかしもなくなりました。

予定忘れを減らすライフハック

・予定を忘れないために、手帳を使いましょう。

・手帳を見る習慣が身につかない場合、手帳を思わず開きたくなるような工夫(たとえば、好きな写真を入れる等)をしてみましょう。

②先延ばしをしないためのライフハック

ADHDの傾向があると、やらなければならないタスクを先延ばしにしてしまい、いつまでたっても手を付けられない…という人もいるかもしれません。

私も、仕事で作らなければならない資料を先延ばしにしてしまい、結果、締め切り間際に夜遅くまでパソコンとにらめっこしていることがありました。

そういった先延ばし癖をなくすためにはどうすれば良いか…と考えていた所、本の中から良さそうな方法を見つけました。

Q. 会議や商談の際に必要なパワーポイントでの資料作成を、ついつい先延ばしにしてしまう。

A. まず、真っ白のスライドを、「ファイル名をつけて保存」します。そして、真っ白のままのスライドをどんどん増やしていき、1スライドに一言ずつようやくした内容を「とりあえず」書き込んでいきます。

姫野桂 『「発達障害かも?」という人のための「生きづらさ」解消ライフハック』(株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン 2020年)

自分で試してみたところ、これは確かに効果てきめんだと感じました。

タスクを細分化することで「今日はここまでやろう」とその日こなすべきタスクが目標として見えてくるため、モチベーションを維持しながら仕事ができます。

心理学の用語に「スモールステップ」がありますが、小さな目標(今日はここまでやろう)をクリアしていくことで、最終的な目標(タスクを完成させる)をクリアしやすくなります。

私はこの方法を使うことで仕事を先延ばしせず、ある程度余裕を持って終えることができるようになりました。

先延ばしをしないためのライフハック

・しなければならないタスクを細分化して、今日中にやるべきことをあらかじめ書き出しておきましょう。

③他者との距離感を測るライフハック

第1回のASDコラムでも書きましたが、私はASDの特性で、コミュニケーションの取り方が積極奇異型(積極的に人と関わるが、どこか変わっているタイプ)という特徴があります。ですので、他者との距離感を間違えて失敗してしまうことがありました。

人との関係性は目で見てわかるものではありませんので、ASD当事者にはそれを測ることが非常に難しいと感じます。

例えば私の場合、そこまで親しくもない間柄の人に対して、2人きりで飲みに行くことを誘ってしまったり、自分の内面に関する話をしたりして、相手を困惑させてしまうといった失敗をしてきました。


そこで私は、他者との関係性が「見える化」できれば、人との距離感を適切に測りやすくなるのではないかと考え、人との関係性を3つのレベルに分けています。

レベル1:仕事の話だけをする人
レベル2:仕事以外の話(世間話、趣味など)をする人
レベル3:深い話(自分の内面、本性など)をする人

このようにすることで、距離感を間違えて近づきすぎてしまうことを減らすことができます。

例えば、2人での飲みに誘う人はレベル2以上、自分自身に関する社会的に受け入れられづらい話をする人はレベル3以上といったように基準を設けることで、他者との適切な距離感を測りやすくなりました。

他者との距離感を測るライフハック

・人との関係性をレベル分けしましょう。

・レベルに応じた付き方を決めておきましょう。

工夫をすることで、生活しやすくなる

以上のように、私が発達障害の特性と共存するために実生活で行っている工夫についてお伝えしてきました。

発達障害には様々な特性があり、それらで失敗せずに共存していく術を探している人もいるかもしれません。自分の特性をよく理解し、その特性を考慮した工夫をすることで、失敗を繰り返して自己肯定感が下がってしまうことを減らすことができます

最近では、発達障害当事者の方々が行っている工夫(ライフハック)をまとめた本も出版されています。

そのような工夫を、自分自身で編み出したり、人からアイディアをもらったりすることで、自分の特性と共存しながらイキイキと生活できる発達障害当事者の方々が増えればいいなと思います。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

この記事の著者

田中 竣也(たなか しゅんや)

発達障害児の療育に携わる公認心理師です。また、自身もASD、ADHDと診断された発達障害の当事者でもあります。
発達障害の当事者と支援者、療法の視点から情報を発信したいと思います。宜しくお願いします。