⑤ママ友との関係を改善する【アサーティブコミュニケーション実践編】
今回のアサーショントレーニングでは、事例をもとにママ友とのコミュニケーションについて考えていきます。
本題に入る前に、以前の記事を読んでいない方や内容を忘れてしまった方向けに簡単に内容をふり返ります。アサーションがある程度分かっている方は、復習はとばして「2.アサーションでママ友とのコミュニケーションを改善する」から読んでください。
前回までの復習
第1回の復習:アサーションとは
アサーション第1回では、コミュニケーションのパターンを以下の3つに分けて考えました。
- 自分の意見ばかりを主張する「ジャイアンタイプ」
- 消極的で自己主張するのが苦手な「のび太くんタイプ」
- 自分の意見も相手の意見も大事にする、さわやかな自己表現ができる「しずかちゃんタイプ」
「しずかちゃん」のコミュニケーション方法が一番理想的ではあるけれど、常に「しずかちゃん」である必要はなく、自分の意思で「のび太くん」と「ジャイアン」を選択することができるのが、アサーショントレーニングの目指すコミュニケーションだというお話をしました。
第2回の復習:アサーショントレーニングの方法とコツ
アサーション第2回では、アサーションの方法としてIメッセージと4ステップのコミュニケーション法を学びました。
Iメッセージとは「私は」を主語にしたメッセージのことで、たとえば「早くしなさい!」→「私はあなたに急いで欲しい」というようにメッセージを伝えることで、ネガティブな気持ちでも相手を責めるニュアンスではなく、客観的な情報として伝えることができます。
4ステップのコミュニケーションは、下記のステップを順に行うことで相手の気持ちを害することなく、はっきりと気持ちを伝えることができる方法です。
もし、アサーションのことがよく分からないという方は、第1回と第2回の記事を先に読んでおくことをお勧めします。
①アサーションとは【ドラえもんで理解するアサーション】
②アサーショントレーニングの方法とコツ【ドラえもんで理解するアサーション】
③夫婦関係を改善する【アサーティブコミュニケーション実践編】
④育児コミュニケーションを改善する【アサーティブコミュニケーション実践編】
アサーションでママ友とのコミュニケーションを改善する
出産し、育児が始まると、それまでにはなかったコミュニティとしてママ友との関係が加わるのではないでしょうか。幸い、私自身はママ友に恵まれており、特に嫌な思いをすることなく過ごしてきましたが、辛い思いをされている方も少なくないと思います。
それでは、ママ友とのコミュニケーションで、困ることって一体どんなことでしょうか。よくある例を挙げてみます。
・自慢話が多い。
・愚痴ばかり話す。
・LINEを送ってくる頻度が多い。
・家庭事情を聞いてくる。
・人(他のママ友)の悪口を言う。
・挨拶を返してくれない。
・何を考えているのか、どう思っているのかわからない。
ネットで「ママ友との困りごと」を検索すると、たくさんの内容が出てきます。それだけ、悩んでいる方が多いということですよね。
今回も、事例を見ながらママ友とのコミュニケーションについて考えていきましょう。
事例1:ママ友の愚痴や悪口が多い時
事例1:愚痴や悪口が多いママ友
あなたには苦手なママ友がいます。彼女は自分の夫や家族についての愚痴や、その場にいないママ友の悪口が多く、どうしても好きになれません。あなたは幼稚園の送り迎えの際、なるべく顔を会わせないような時間に幼稚園へ行っていますが、会う度に「○○ちゃんのママ、ちょっと聞いてくれる?」と話しかけてきます。あなたはいつも「聞きたくないなぁ」と思いながらも、笑顔を作って聞いています。
こういう場合、どうしたらよいでしょうか?
愚痴や悪口、自慢話など、本当は聞きたくないけれど、とりあえず聞いてしまうことってありませんか?
こういう場合、アサーティブに対応するとしたら、どうすれば良いでしょうか。
事例1の対応例
○○ちゃんのママ、毎日頑張ってるんですね。(ステップ1)
ゆっくりお話をおうかがいできるといいんですけど、ちょっと私も行かなきゃいけないところがあるんです。(ステップ2)
申し訳ないけれど、今日はこれで失礼しますね。(ステップ3)
今回は、Iメッセージが少し弱めの応答です。
自分の感情をはっきりと伝えるのであれば、「聞いていると、なんか私もしんどくなってきちゃった」など、伝えても良いのかもしれませんが、ママ友との関係性では、ここまで伝えるのは難しい場面も多いのではないでしょうか。
また、4つのステップに沿って伝えようとすると、どうしても話が長くなってしまい、とにかく話をしたい人を相手にした実践場面で伝えるには難しいことも多いです。
その場合は、シンプルにIメッセージとステップ3だけでも良いです。
今日はこのあと用事があるので、お先に失礼しますね。
ゆっくりお話をおうかがいできると良いんですけど、急いでいるので今日はごめんなさい。
愚痴や悪口をいう相手に有効な「魔法の言葉」
そして、相手が愚痴や悪口を言っている時に有効な魔法の言葉をひとつ、お伝えします。
それは…
○○ちゃんママはそう感じたんですね。
というように、IメッセージではなくYouメッセージで伝えることです。
こうすることで、相手には話をちゃんと聞いている印象を与えつつ、彼女の意見や気持ちには必ずしも同意しているわけではないことがフワッと伝わります。
そっかぁ、あなたは、それがしんどかったんだね。
あなたにとっては、大事なことだったんだね
どうでしょうか?例を見ると相手の心情には寄り添っていますが、同意しているわけではないのが分かると思います。
このように、愚痴や悪口の場面ではYouメッセージが活躍します。ぜひ一度試してみてください。
事例2:ママ友によく思われていないか心配な時
事例2:虫が苦手なママ友
あなたの子どもとその友だちは虫が大好きで、よく虫を探したり採ったりしています。今、相手の子のママも一緒に公園に来ていますが、彼女は虫が苦手な様子です。あなたは、自分が子どもたちと一緒に虫採りをしていることや、相手の子が虫を家に持ち帰っていることをよく思われていないのでは…と少し不安になりました。
こういう場合、あなたはどのようにしますか?
相手のママがアサーティブな人であれば、嫌な時は嫌だと伝えてくれるので安心して関わることができるでしょう。しかし、相手がなかなか本音を言ってくれない場合や、あまり親しい関係でない場合、どうするのがよいか分からず、一人で色々と考えてしまうことはありませんか?
そのような場面では、こちらから相手の考えを聞いてみることが有効です。
事例2の対応例
子どもたち、虫が大好きですね。(ステップ1)
○○ちゃんのママは、もしかして虫が苦手ですか?私は平気なので、つい一緒になって虫採りをしちゃってごめんなさい。(ステップ2)
○○ちゃんが虫を家に持って帰ることに抵抗があるなら、全部うちでもらっておきましょうか?(ステップ3)
相手のママがどう感じているのかわからない場合、自分の中だけで考えていると、どんどん悪い方向に考えていきがちではありませんか?
そういう場合には、「もしかして虫が苦手ですか?」など、はっきり聞いてしまうのも一つの方法です。そして、もし苦手であれば、その後、自分にどのような対応ができるのかを、具体的に提示してみましょう。
事例3:ママ友の顔色をうかがってしまう時
事例3:砂場で
あなたの子どもに仲が良い友達がいて、よく一緒に遊んだり、家にも遊びに来たりします。しかし、あなたと相手の子のママは、あまり親しくありません。共通の話題もなかなか見つからないので、一緒にいると少し気まずい雰囲気になります。子どもが公園の砂場で裸足で遊びたがる時も普段は「いいよー」と言えるけれど、相手のママがいると、彼女が嫌がるかなと思い、「うん、そうだねぇ」と曖昧な返事をしながら相手のママの顔色をうかがってしまいます。
こういう場合、あなたはどのようにしますか?
子ども同士が仲良しだからと言って、親同士も仲がよいわけではありませんよね。仲良くはないけれど、一緒の空間にいなくてはいけないとき…辛いですよね。こんなときは、どのように思いを伝えれば良いのか、少し考えてみましょう。
事例3の対応例
子ども達に対して
裸足って気持ち良いよねぇ。(ステップ1)
ただ、裸足になるとケガしちゃうこともあるし、○○君がケガしちゃわないか心配だなぁ(ステップ2)
今日は裸足になるのはやめて、そのまま遊ばない?(ステップ3)
相手のママに対して
砂場で裸足になるの、気持ち良いですよね。(ステップ1)
でも、裸足で砂場を歩くと、足に砂がたくさんついて家のお掃除が大変になっちゃうから、ちょっと嫌な気持ちもありますよね。(ステップ2)
もし良ければ、私、大きいタオルを持っているんで、遊んだあと水道で足を洗って、それで拭いてくだされば良いですよ。(ステップ3)
相手が嫌そうな態度をしているけれど、それをはっきりとは言葉にしていない場合、つい顔色をうかがってしまいますよね。
そういう時は、こちらからYouメッセージで「〜って考えちゃいますよね」「〜って感じますよね」と、あなたはこういうふうに考えていると思って良いですか?ということを伝えるのも1つの方法です。
もし、そのように感じていない場合には「え?そういうふうには思ってないですよ」「そんなことないですよ」と否定してくれるでしょうし、あなたの推測が正しければ、「そうなんですよね〜」と、共感してくれるはずです。
色々と推測して顔色をうかがうよりも、エネルギーを使わずに済むと思いませんか?
事例4:ママ友が詮索好きな時
事例4:家庭事情を聞き出すママ友
今年子どもが入園した幼稚園で知り合ったママが、まだ知り合ってさほど仲良くなっていないのに「旦那さんって何の仕事してるの?」「お姑さんと同居してるの?それってしんどくない?」「習い事って、何を始める予定?もう何かしてるの?」など、どんどん家庭事情を聞いてきます。あなたは「あまり答えたくないなぁ」と思いながらも、「会社勤めです」「同居してますけど、協力してくれるので助かってます」「まだあまり考えてなくて」など、曖昧に答えています。
こういう場合、あなたはどのようにしますか?
ただでさえ、知り合ったばかりの方との距離感の取り方って難しいので、急に詰めてこられると戸惑うこともありますよね。
それでも、このように家庭事情を聞いてこられる経験をしている方は、決して少なくないようです。
事例4の対応例
いつも話してくださりありがとうございます。(ステップ1)
興味を持っていただけて嬉しいのですが、私は話し下手で、自分のことを話すのがあまり得意じゃないんですよ。(ステップ2)
なので、うまく答えられないことが多くてごめんなさい。(ステップ3)
事例として書いておきながら、まわりくどいですね(笑)
やはり4つのステップを全て踏襲しようとするのは、日常生活では不自然になりがちで回りくどいことが多いのが現実です。
事例4のような場面では「色々聞かれると、戸惑ってしまいますね。ふふふ。」など、色々聞かれることに対する自分の感覚をIメッセージで伝えるだけでも良いのかもしれません。
それに対して「良いじゃない、教えてよ」とさらに詰め寄られた場合には、「また今度お話しさせてくださいね」と提案をしておしまいにしても良いでしょう。
以上、今回は限られた場面設定ではありますが、ママ友とのコミュニケーションについて実践例をお伝えさせていただきました。
ただ、ママ友というのは、言い方は悪いかもしれませんが、子ども同士の年齢が近いだけの人間であり、無理に付き合う必要があるわけでもありません。(幼稚園や小学校のPTA等で密な付き合いがある、家が近所、同じマンションなど、事情がある場合は別ですが)
付き合い続けるとあなたが疲れてしまいそうな場合、そっと距離を取るのも一つの対処法であることを覚えておいてください。