⑨Withコロナの応募・採用(後編) ~わたしの幸せをつくる転職活動~

山本先生

皆さん、こんにちは。公認心理師/臨床心理士/キャリアコンサルタントの山本智代です。「わたしの幸せをつくる転職活動」をテーマに、効果的な転職活動の進め方について連載しています。

本連載では、キャリア・プランニング・プロセスという方法に則り転職活動を行うことを勧めており、前回はキャリア・プランニング・プロセスのステップ7「転職・異動」の前編をお伝えしました。

キャリア・プランニング・プロセス

  1. 意思決定の必要性の自覚・・・転職の必要性を判断
  2. 自己の再評価・・・職業経験の振り返り、興味・能力・価値観の見直し
  3. 職業・仕事の特定・・・職業・仕事の絞り込み
  4. 選択肢に関する情報収集・・・絞り込んだ職業・仕事の情報を様々な手法で集める
  5. 仮決定・・・ステップ3で絞り込んだ職業・仕事から1つの選択肢を選ぶ
  6. 教育・訓練・・・必要があれば、資格取得やスキル向上の教育・訓練を受ける
  7. 転職・異動・・・ステップ5で選択した職業・仕事への応募、応募書類の作成、面接(前回)

前回までの記事をご覧になっていない方はぜひこの機会にご一読いただければと思います。

仕事/就職・転職
①【転職のタイミング】今の仕事に疑問を感じたとき、あなたならどうする 「わたしの幸せをつくる転職活動」
仕事/就職・転職
②【自己の再評価】転職を決めたら、まずやること「わたしの幸せをつくる転職活動」
仕事/就職・転職
③職業・仕事を特定する(前編)「わたしの幸せをつくる転職活動」
仕事/就職・転職
④職業・仕事を特定する(後編)「わたしの幸せをつくる転職活動」
仕事/就職・転職
⑤職業情報を集めるコツ「わたしの幸せをつくる転職活動」
仕事/就職・転職
⑥仮決定をする「わたしの幸せをつくる転職活動」
仕事/就職・転職
⑦教育・訓練を受ける「わたしの幸せをつくる転職活動」
仕事/就職・転職
⑧Withコロナの応募・採用(前編)「わたしの幸せをつくる転職活動」

今回も、前回に引き続きステップ7「就職」についてお伝えします。このステップ7は、より自分にとって満足した仕事に就くために、ステップ5で仮決定した「職業・仕事」と「企業」をマッチングしていく作業です。

前編では、「自分と仲間になれる企業」を見つけるために、「わたしと企業の共通点」と「求人の見つけ方」のポイントをお伝えしました。後半では、Withコロナ時代を踏まえた応募書類・面接対策について、特に重要な「志望動機と自己PR」のポイントをお伝えしていきます。

志望動機と自己PRの違い

就職活動は、創業者の思い(会社の未来)に共感・賛同して「仲間」になる活動でもあります。ここでは、給料の「対価」として、自分は会社に何を提供できるか?という視点で考えてみましょう。

まず、混同されやすい志望動機と自己PRの違いを整理しておきましょう。

(例)A社を志望する場合
志望動機】他社ではなく、A社の「仲間になりたい理由」
・「企業が提供する価値を一緒に提供したい理由」を書いていきます。
【自己PR】私がA社の「仲間として役立つ理由」
・企業が提供する価値に対し、将来を含め私が役立つことを書いていきます。

志望動機、自己PRは志望企業によって異なります。複数応募企業があれば、応募企業ごとに作成しましょう。

山本先生

最初から文章にしようと書き始めるのではなく、箇条書きで要点をピックアップし、それらを組み合わせながら文章に繋げてもよいでしょう。

志望動機と自己PRのポイント

志望動機のポイント

志望企業とは、企業が社会に「提供する価値に共感できる企業」のことです。志望企業の「志望動機」を作成するためには、①②を明確にする必要があります。

  1. 企業が提供する価値を知る(前編の「価値観のマッチング」もご参照ください)
  2. その会社の仲間になって、どのような価値を社会に提供したいか
  3. ②を踏まえ、「企業が提供する価値を一緒に提供したい理由」を書きます。

作成の流れ(例)
・(特に見学や体験等の直接面識のある場合、会社を知ったきっかけ)
・会社のどこに共感、賛同しているか
・なぜそう思うのか(自身のエピソードでその理由を証明する)
・まとめ(〇〇に共感したから、将来□□したい)

自己PRのポイント

企業が価値を提供することに対して「(将来)私が役立つこと」です。以下の手順で自己PRをする材料を集め、推敲していきましょう。(前編の「能力のマッチング」もご参照ください)

(1)企業戦略から「求める人材像」を把握する
(2)「自分の強み」からそれに合致する部分を探す(コラム②「自己の再評価」もご参照ください)
(3)その強みを証明する「エピソード」を伝える
(4)自分の強みを活かし、「会社の未来で活用していけることを宣言」する

書類で示した内容と面接での応答に「一貫性」がない場合は、採用側の不安材料になりかねます。面接では、応募書類の内容も踏まえた質問が想定されます。書類選考で提出した書類は保管し、事前に何を相手に示したかを念頭に入れておきましょう。

一度作成した志望動機・自己PRは、できれば第三者の目を通す機会を得るとよいでしょう。自分側の視点のみになりがちな志望動機・自己PRですが、カウンセラーなどに添削を依頼し、採用側の視点も踏まえることで、より精度を上げることができるでしょう。

ピンチをチャンスに変える

Withコロナ時代、「ピンチをチャンスに変える」企業が生き残ると言われています。

例えば、面接の際、下記の質問をしたとき、A~C社のうち、どの応答をした企業が、上記を具現化している可能性があるとみることができるでしょうか?

応募者

Withコロナ時代、御社はどのように変化していくのか、具体的に教えて下さい。

A社:これから、変化していきます!
B社:今まで通りで、打破できると考えます!
C社:既に変化しました!具体的には○○です!

こたえは、C社です。

既に変化しており、かつどのように変化したのかを具体的にこたえられる企業です。Withコロナ時代の変化に即し「ピンチをチャンスに変える」企業と言えるかもしれません。

Withコロナ時代に「求められる人材像」

Withコロナ時代、「変わる」企業が生き残ると言われています。そのような中、求められるのは「変える」ことができる人材です。

そして、企業が「既に変化している」ことがWithコロナ時代の成長企業の1つの指標であるとみるとき、応募者側も「既に変化していることを具体的に伝えられる」ことが必要です。

ピンチをチャンスに変えた意思決定や経験、過去にとらわれず、予期せぬ出来事に対し柔軟に新たな発想で成果を出せた体験等も、Withコロナ時代にマッチするPRエピソードとなるでしょう。

Withコロナ時代「求められる力」の例として以下を挙げることができます。

  • 前例にとらわれない意思決定力
  • 決断する勇気と覚悟する力
  • 前代未聞の変化への対応力

「変化は苦手…」という人であっても、まずは少なくとも「変化に対し前向きに取り組める」ことが大切となるでしょう。

もし、現在の自分が「変化していないな…」と思ったら、今からでも、変えられることがあるかもしれません。そして、今からあなたが変化に向けた行動ができたとき、それは自己PRできる要素が増えることにもなります。今からでも、自分が変化できる点を整理してみましょう。

転機をチャンスに変えて「わたしの幸せをつくる」

「転機をいかにチャンスに変えるか」は、Withコロナ時代を生き抜くヒントとなるかもしれません。

転機は、出来事が起こっても起こらなくても、それが結果的に「変化」をもたらせば、その人にとって転機が起きたことになります。変化は「役割、関係、生活、自分自身に対する見方」です。

役割:人生の役割のうち、どれかがなくなるか、または大きく変化する
関係:大切な人との関係が強まったり薄れたりする
日常生活:物事をいつ、どのように行うかが変化する
自分自身に対する見方:自分自身に対する見方が影響を受ける

人は「転機」を避けることできません。大切なことは、転機によるマイナスの影響を最小限に抑えられるように、転機に論理的に対処できることだと言われています(Schlossberg,N.K)。

転職活動をされている方にとっても、今まさに「転機」の1つと言えるかもしれません。あなたの人生を振り返ってみたとき、転機はいつ、どのように起こりましたか?そして、あなたはその転機をどのように体験しましたか?一見、点と点でバラバラになっているような転機でも、繋いでみると、ちゃんと線となって、現在のあなたに繋がっていることに気付かれることでしょう。そして、その転機の体験が、現在のあなたを支えていることに気付かれるもしれません。

どのような転機も、自分が変化するチャンスです。様々な制約があるなかでも、今の自分の位置で、できることがあります。それを1人の力でやっていくことは大変なことでもありますが、キャリア・プランニング・プロセスで行ってきたように、自分と自分の周囲にあるたくさんのリソース(資源)を活用しながら、チャンスを広げていくことはできます。

そして、すでにあなたの中にあるチャンスを広げられる可能性は、無限大です。あなたのなかに存在する、あなただからこそもてる、かけがえのないリソース(資源)を愛おしんで育んでいきましょう。ぜひ、あなた自身が、「あなた自身の幸せをつくる」主体であることに、一緒に喜びを感じていたいです。

著者の山本先生にオンライン相談(有料)もできます。詳しくは、下記プロフィールの「紹介ページを見る」をクリックしてみてください。

著者プロフィール

山本 智代(やまもと ちよ)

公認心理師・臨床心理士・キャリアコンサルタント
ココロト オンラインカウンセラー

教育系大学を卒業後、人材総合コンサルタント企業での人材育成・派遣事業、教育関連企業での進路セミナーの企画営業に携わった後、官公庁、ハローワークの採用・キャリア支援の勤務を経て心理系大学院へ進学。卒業後は、心理とキャリアに関する専門家として、行政機関での乳児・幼児・児童の発達・教育相談、ハローワークでのキャリア・心理カウンセリング、スクールカウンセラー等に従事。さらに、女性のキャリア、仕事と子育ての両立などをテーマにしたキャリアカウンセリングやセミナーに携わっている。