⑥仮決定をする「わたしの幸せをつくる転職活動」

皆さん、こんにちは。公認心理師/臨床心理士/キャリアコンサルタントの山本智代です。「わたしの幸せをつくる転職活動」をテーマに、効果的な転職活動の進め方について連載しています。

本連載では、キャリア・プランニング・プロセスという方法に則り転職活動を行うことを勧めており、前回はキャリア・プランニング・プロセスのステップ4「選択肢に関する情報収集」として、 職業や仕事に関する情報を効果的に集めるコツをお伝えしました。 本稿はステップ5「仮決定」について取り上げます。

キャリア・プランニング・プロセス

  1. 意思決定の必要性の自覚・・・転職の必要性を判断
  2. 自己の再評価・・・職業経験の振り返り、興味・能力・価値観の見直し
  3. 職業・仕事の特定・・・職業・仕事の絞り込み
  4. 選択肢に関する情報収集・・・絞り込んだ職業・仕事の情報を様々な手法で集める
  5. 仮決定・・・ステップ3で絞り込んだ職業・仕事から1つの選択肢を選ぶ(今回)
  6. 教育・訓練・・・必要があれば、資格取得やスキル向上の教育・訓練を受ける
  7. 転職・異動・・・ステップ5で選択した職業・仕事への応募、応募書類の作成、面接

前回までの記事をご覧になっていない方は、ぜひこの機会にご一読いただければと思います。

仕事/就職・転職
①【転職のタイミング】今の仕事に疑問を感じたとき、あなたならどうする 「わたしの幸せをつくる転職活動」
仕事/就職・転職
②【自己の再評価】転職を決めたら、まずやること「わたしの幸せをつくる転職活動」
仕事/就職・転職
③職業・仕事を特定する(前編)「わたしの幸せをつくる転職活動」
仕事/就職・転職
④職業・仕事を特定する(後編)「わたしの幸せをつくる転職活動」
仕事/就職・転職
⑤職業情報を集めるコツ「わたしの幸せをつくる転職活動」

職業や仕事を1つに絞る

本ステップ5「仮決定」では、ステップ4でリストアップした職業や仕事の選択肢から1つを選びます

人生における職業や仕事の選択肢を1つに絞る作業は大きな決断とも言えるでしょうし、抵抗を感じる方も少なくありません。また、1つに絞ることができない自分を「次に進む覚悟がもてないから、決められない理由(いいわけ)を探していると気付いた」と言う方もいます。もし決められないとしたら、自分の中で何がストップをかけている要素になっているのか、本当はどうしたいのか、一度立ち止まってみていく必要があるかもしれません。

ここで大事なことは、あくまで「仮に決定する」ということです。仮に決めることですから、今後、行動していくなかで修正も変更もできます。いきなり大きな決定をすることはエネルギーがいることでもありますが、全てを決め切ってから行動するのではなく、その都度、仮決定を重ねながら行動していけるとよいかもしれません。

職業・仕事を1つに絞りきれない場合のポイント

しかし、仮決定とは言え、職業・仕事を1つに絞りきれない場合もあるでしょう。その場合は、職業・仕事を選択するうえで「自分が最も大事にしたい項目」を選び、比較検討するとよいでしょう。

「自分が最も大事にしたい項目」のポイントのひとつは、ステップ2、3で検討した「(自分のありたい姿や望みを中心とした)興味・能力・価値観」×「(周囲の状況を考慮した)現実検討」の内容です。ここでもう一度、「現在の自分は何に価値を置きたいのか、何を大事にしたいのか」を問い直してみましょう。

現在不足しているものがあれば、不足を補うためにどのような方策が考えられるか、周囲にどのように協力を得られるか、などを現実検討してみるとよいでしょう。現在すぐ実現が難しい場合は、中長期的プランとすることも含めて、改めて検討してみましょう。

以下に、「自分が大事にしたい項目」としてよく挙がるものを記載しましたので、参考にしてみてください。

「自分が最も大事にしたい項目」の例

  • 興味の一致度
  • 能力の一致度(これから補うスキル・知識を含む)
  • 価値観の一致度
  • 環境への影響度(家庭生活、経済面など)
  • 職業・仕事の多様性、将来性

各選択肢の重要度がわからなくなったり、改めて迷いが出てきたりする場合は、専門カウンセラー等と一緒に整理してみるとよいかもしれません。

また、今回の連載でご紹介している7つのキャリア・プランニング・プロセスは、一方向一直線に進むとは限りません。ステップの途中まで行ったところで、必要に応じて前のステップに戻ったりすることもあるでしょう。行動しながらその時々に気付いたこと、必要なことを吟味するプロセスを大事にしていきたいですね。

行動計画シートを作成する

職業を1つに仮決定できたら、次は行動計画を立ててみましょう。行動計画とは、就職までに実行する必要のあるステップをリストにしたものです。

以下に行動計画シートをダウンロードできるようにしております。

縦軸がキャリア・プランニング・プロセスの各ステップ、横軸が時系列になっています。ポイントは、「仮決め」でよいので、完了目標日を明確にすることです。

特に本ステップからは、具体的な行動が必要なプロセスに入ります。そのため、「目標と完了日を見える化」することで、自分が今どのステップの位置にいるのか、目標達成のためには今後どのようなステップが必要か、そのために今の自分にとって必要な行動は何かなど、現実的に理解しやすくなります。キャリアカウンセリング等を活用されている場合は、カウンセラーと共有しておくとよいでしょう。


職業を仮決定し、進む方向が明確になれば、あとは「行動」が肝です。1人ではなかなか進まないという方であっても、目標を共有し協働作業しながらだと進みやすいという方は少なくありません。専門カウンセラー等をうまく活用しながら行動を進めていきましょう。

また、行動計画は自分の計画通りにいかないことを前提で進めていくことも大切です。見通しをもち、計画を立てることは大切でもありますが、応募企業の都合や自身や周囲を取り巻く環境によって計画が変化していくことは、当然あり得ることです。例え計画通りに行かなくても、変更したり修正したりしながら柔軟に見通しを立てていけるとよいでしょう。調整日や予備日を作っておくとよいかもしれませんね。

偶然の機会がキャリアをつくる「プランド・ハップンスタンス・セオリー」

クルンボルツ(Krumboltz,J.D.)、ミッチェル(Mitchell,K.)、レヴィン(Levin,A.)らは「プランド・ハップンスタンス・セオリー(Planned Happenstance Theory:計画された偶然性理論)」を発表し、「偶然の出来事の影響を無視したり、過小評価したりするよりは、それらのもつ重要な役割を認識し、利用し、またはそれらを積極的に生み出すこと」を説きました。偶然の出来事はキャリアの機会をつくり、チャンスを与える、というものです

キャリアは事前に計画されたものだけではなく、偶然の機会からチャンスを掴み、自身のキャリアに活かしていける可能性があるということは、コロナ禍など予測不能で不確実かつ変化の激しい現代の状況において、ひとつの光を見出してくれる理論と言えるかもしれません。このように「偶然がキャリアをつくる」こともあるという可能性を踏まえ、「計画したこと」+「計画外に起こったこと」の両方で自身のキャリアを捉えてみましょう。

自ら立てた計画を絶対視せずに「計画通りに行かないことは当たり前でもある」という前提で、前述した行動計画シートを作成しておくとよいでしょう。

ここで、「偶然の出来事」をキャリアの「チャンスや好機に変える」ために必要な5つのスキルをご紹介します。以下の5つのスキルを使って「プランド・ハップンスタンス」をつくり出すことが、「人生の質」を深めると言われています。

「プランド・ハップンスタンス」をつくり出す5つのスキル

  • 好奇心(Curiosity):新しい学びの機会を模索せよ。
  • 持続性(Persistence):失敗しても諦めずに努力し続けよ。
  • 柔軟性(Flexibility):姿勢や状況を変えよ。
  • 楽観性(Optimism):新しい機会は必ずやってきて、それを自分のものにすることができると考えよ。
  • 冒険心(Risk-taking):結果がどうなるか見えない場合でも行動を起こせ。

筆者も様々な転機に直面した際、上述の理論と5つのスキルが大変助けになりました。

転職活動では、様々な局面で立ち止まることが必要なときもあるでしょう。先行き不透明なとき、計画通りに行かないときこそ、この5つのスキルを自分に取り入れてみることで、新たなキャリアの機会をつくり出していけるかもしれません。

まとめ

職業や仕事を仮決定し、今後のステップに費やす期間を設定し、目標と完了日を立て、そのためにすることを決めておくことで「必要な行動」を取りやすくなります。一方、予想外のことが起こったときや計画通りに行かなかった場合でも、その出来事や機会はキャリアをつくる「チャンス」となり得ます。

転職活動が計画通りにいったか、いかなかったかではなく、「ひとつひとつの機会にキャリアのチャンスがある」と捉えてみましょう。各ステップで「自分は何をつかんだか」をフィードバックすることで、自らキャリアの機会をつくり出せる自分自身がいる、その可能性と気づきを楽しんでいきたいものです。

著者プロフィール

山本 智代(やまもと ちよ)

公認心理師・臨床心理士・キャリアコンサルタント
ココロト オンラインカウンセラー

教育系大学を卒業後、人材総合コンサルタント企業での人材育成・派遣事業、教育関連企業での進路セミナーの企画営業に携わった後、官公庁、ハローワークの採用・キャリア支援の勤務を経て心理系大学院へ進学。卒業後は、心理とキャリアに関する専門家として、行政機関での乳児・幼児・児童の発達・教育相談、ハローワークでのキャリア・心理カウンセリング、スクールカウンセラー等に従事。さらに、女性のキャリア、仕事と子育ての両立などをテーマにしたキャリアカウンセリングやセミナーに携わっている。